読書感想文

梨木香歩「西の魔女が死んだ」を読む

作家が小説の構想を練るときは「どんな読者に読んでもらいたいか」が重要な要素になりますが、本書においては40歳以上の男性はまったく視野にないでせう。そこんところ、オジンが少しの義理あって読んだのであります。内容は若い女性向きのファンタジー。…

再訪<こども本の森 中之島>

Gウイーク頃から少し体調(ガンの後遺症)が安定してきたので外出の機会を増やしています。今回は主題の図書館。名前のように子供向きの図書館ですが、予約すれば大人でも利用できます。子供向きと言っても平日の昼間は学校授業があるから利用出来るのは未就…

中井正弘「仁徳陵 ~この巨大な謎~」を読む

著者、中井氏とは一、二度お会いしたことがあって、堺市大浜公園の「蘇鉄山」山名登録運動がご縁だった。もしや、地元のバー「クラシカル」マスター髙杉さんの紹介だったかもしれない。中井氏は堺市に勤める公務員(すでに退職)が本職だけど「堺の歴史なら…

中村紘子「ピアニストだって冒険する」を読む

Kさんから電話あり。「まちごうて同じ本を2冊買うてしまいましてん、一冊贈るので読んでくれますか」一体、どんなミスをすれば、こんな悔しい事態になるのか。事情はともかく、有り難く頂戴しました。何度も書くが、お酒、食料から書物まで、駄目男の暮ら…

城山三郎&平岩外四「人生に二度読む本」を読む

図書館でこの本を見つけたとき,中身も見ないで「良い本に出会った」と嬉しくなりました。読んでみれば期待通りで、読書の達人が対談で好きなように語る雰囲気まで伝わるような楽しい本です。 城山三郎は有名作家だから紹介するまでもありませんが、平岩氏は…

dameo <リニア中央新幹線不要論> ~その4~

リニアがダメならこれでいく!? 本書で一番興味を引いた記事は「リニア新幹線開発でコケたら<第二東海道新幹線>をつくればよろし」であります。そんなアホな・・・。しかし、よく読んでみると十分説得力があり、ほんまや、それのほうがよろしいがな、と思…

dameo <リニア中央新幹線不要論> ~その3~

◆肝心の開発コンセプトが時代遅れになってしまった 数年後に品川~名古屋間が開業しても東京~名古屋~新大阪間の所要時間は現在よりほんの少し(20分程度)短縮されるだけです。その代わり面倒な乗り換えが必要になり、乗り心地も新幹線より悪くなる。「…

dameo の<リニア中央新幹線不要論> ~その2~

前回は利用者の立場でリニア新幹線不要論を書きました。続いて技術面でのリニアに関する不信感や不安を書きます・・といっても自分にはぜんぜん知識が無い。まずは、川辺謙一「超伝導リニアの不都合な真実」という本を読みました。表現は穏当ながら、リニア…

dameo の<リニア中央新幹線不要論> ~その1~

現在の東海道新幹線はいずれ輸送力が限界を迎える。また、大地震など、大災害時には代替の交通システムが必要、さらに、現新幹線の大規模リニューアルでは長期間の休業が必要・・などの理由で「リニア中央新幹線」が企画され、すでに工事が進んでいます。予…

齋藤 孝「50歳からの孤独入門」を読む

齋藤センセのハウツーもの著書としては少し異色というか、内容がやや暗いめというか・・人生相談みたいな内容の本。心の機微にふれる話が多いのですが、まとめの上手さはいつも通り、主張はすれど押しつけないソフトな語り口もふだんの齋藤流です。 dameo は…

加地伸行「マスコミ偽善者列伝」を読む

雑誌などに掲載したコラムをまとめた辛口の評論集。著者は中国哲学史研究者で保守の言論人だから、標的にされたのは左翼やリベラルの人物が大半で、こんなに露骨に悪口書いて委員会?と心配するくらいであります。しかし、名誉毀損などで訴えられたケースは…

仕事は<勉強>趣味も<勉強>・・立花隆の勉強人生

4月30日の「Nスペ・立花隆の最後の旅」を見た。この日は立花隆の一周忌。永年、ドキュメント作品づくりで立花と付き合ったディレクターの目でみた「知の巨人」人物像の紹介であります。(当ブログ3月28日の記事で立花隆「僕はこんな本を読んできた」を…

Gウイーク 爺は寺へ古書刈りに・・・

3日はとてもさわやかな晴天だったので、おなじみ四天王寺の古本市へ。陽気につられて老若たくさんの客で賑わっていました。7割が男性客というのはところ問わずのパターンみたい。今日、一番人気のあったのは200円均一売り場でレジに行列が出来るくらいでし…

吉村昭 短編集「碇星」を読む

近頃、視力が衰え気味なので弱視者用の大活字本で読みました。これなら330ページを3時間以内で読めてとても快適。本の内容も大事だけど、ロージンには読みやすいかどうかも選択の判断になります。前回紹介した中島敦の短編集は全180ページ中「注解」…

中島敦「李陵・山月記」を読む

何十年ぶりかで再読。若い人にはほぼ無視されてる作家ですが、短編ながら中身の濃さでは凡百の作家、足下にも及ばずであります。重厚長大でなく、重厚短小で印象深い作品です。「山月記」はながらく教科書にも使われたそうだから「そう、人が虎になってしま…

半藤一利「幕末史」を読む

著者が東京の某所の生涯学習講座みたいな講座でしゃべったことをまとめた本。話し言葉で書かれているので親しみやすいが、内容がラフというものではない。膨大な資料を渉猟して得たマジメな情報を500頁とヴォリュームたっぷりの本にまとめました。 歴史マ…

BRUTUS編「すべては、本から。」を読む

めったに立ち寄らない雑紙売り場で目にとまったのがこの本。購入するのはン十年ぶり・・であります。いまどきの若者、中年はどんな本を読んでいるのかという傾向と売れ筋を知りたくて買いました。文字の小さいのが気に入らないがムリしてページを繰る。カッ…

小山和伸「これでも公共放送かNHK!」を読む

受信者から強制的に受信料を徴収して経営しているのに、デタラメな番組をつくって国民を欺いてるのがNHK。その内実を糾弾する本です。・・と書いてもネタが古いし、視聴者のほとんどには「何のこっちゃねん?」な、ウケない話題であります。 NHKのすべ…

石原慎太郎「太陽の季節」と選評を読む

著者の絶筆「死への道程」は文芸春秋四月号に掲載され、3月13日、当ブログで紹介しました。幸いにも同号では石原氏の芥川賞受賞作「太陽の季節」とその選評全文も掲載されたのでトクした気分で読みました。芥川賞作品を読む楽しみの三分の一くらいは「選…

野呂邦暢の作品を読む

■諫早菖蒲日記 ■夕暮れの緑の光 作家にも、地味タイプと派手タイプがあるとすれば、この人はジミ派の代表。作品がトップセラーになったとか、映画化されたといった世俗的話題には上らないまま、1980年、42才で急逝。しかし、そのジミな作品を愛するフ…

きたみりゅうじ「フリーランス はじめてみましたが・・」

人は生涯に何度「退職願い」を書くのだろう。そんなデータはないと思うけど、勝手に想像すれば2~3回ではないだろうか。現在の若者は5回以上が普通になるかもしれない。dameo の場合は4回退職して自営業になったけど、4回目は社長が夜逃げしたので「退…

浦久俊彦 「悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト」             ~パガニーニ伝~

読みたいと思っていたパガニーニの伝記にようやく出会った。18~19世紀にヨーロッパで大活躍したニコロ・パガニーニの天才ぶりと波乱に満ちた生涯をコンパクトにまとめた本で、興味津々だからすいすい読めました。 異様な風貌と黒づくめの衣装の印象など…

清水正「つげ義春を読む」を読む

大人になってから漫画本とは縁が切れてしまった。例外的に愛読したのは東海林さだおのサラリーマンものの週刊誌漫画くらい。ところが、1990年ごろにたまたま図書館の漫画コーナーで「つげ義春全集」と出会い、ぞっこん惚れて何十編もの作品をまとめ読み…

糸井重里「すいません、ほぼ日の経営。」を読む

もう五回くらい書いたかも知れないが、一般人の理想の人生とは・ 好きなコトをして・それでメシが食え・しかも世間で喜ばれるという職業人生であります。 そんな理想に近い人生を送っている、と思える人物の一人が糸井重里氏であります。ハタから見るかぎり…

司馬遼太郎「新撰組血風録 芹沢鴨の暗殺」を読む

なんでこの短編を読もうとしたか。コロナ禍のまえにたまたま京都・島原の「角屋」を見学したからであります。入館料1000円という高額ゆえか訪問者は少なくて、駄目男が訪ねたときも客は自分だけ。角屋の御当主?と思われる方が角屋の歴史由来を説明して…

池井戸 潤「果つる底なき」を読む

珍しくミステリーを読みました。いま、作家の稼ぎ頭?池井戸潤氏の24年前の作品で「第44回江戸川乱歩賞」受賞作です。読んでしみじみ感じたのは頭の老化で登場人物の名前や役割を覚えられずに困ったことです。それに400頁を越えるような長編を読むの…

加治将一「舞い降りた天皇」を読む

~初代天皇「X」はどこから来たのか~ 近年読んだ歴史モノでは出色の面白い本だった。小説(ミステリー)仕立てで書いてあって、古代から飛鳥・奈良時代あたりまでの歴史を鳥瞰するような、ワイドで中身も濃い情報が詰まっている。この一作で古代史のおさら…

1959年・絵本に描かれた「宇宙ロケット」

絵本「こどものせかい」の出版社から「宇宙旅行の絵を描いて下さい」と注文された画家はどれくらい困惑したか。もし、自分が画家であれば「まいど、おおきに」と二つ返事で引き受けただろうか。今から64年前、昭和33年のことである。 たった8頁のこの絵…

立花隆「ぼくはこんな本を読んできた」を読む

小説、ノンフィクションを問わず、モノを書くときはモーレツに資料を集める作家とは? 西は司馬遼太郎、東はこの立花隆と佐藤優センセでせう。稼いだ金の大半を資料の収集に費やしてしまう。それでも普通は自宅に本棚をぎっしり並べるというのが普通のところ…

田辺聖子「あかん男」を読む

作・田辺聖子、解説・酒井順子、とあらば読まずにおれない・・本であります。書名からわかるように大阪弁でかかれています。短編七編のうち、dameo お勧めの二編を紹介。1975年の発行ですが古くささを感じさせない。 へらへら ある日、目ざめると隣で寝てい…