加地伸行「マスコミ偽善者列伝」を読む

 雑誌などに掲載したコラムをまとめた辛口の評論集。著者は中国哲学史研究者で保守の言論人だから、標的にされたのは左翼やリベラルの人物が大半で、こんなに露骨に悪口書いて委員会?と心配するくらいであります。しかし、名誉毀損などで訴えられたケースはなかった。なぜ訴えないのか。それは書いてあることが事実だから、と加地センセは涼しい顔してる。馬鹿呼ばわりされた人は自ら馬鹿を認めるしかないと。


主な被害者(?)は下の表紙写真のような方々。多くは朝日や毎日と仲の良い面々でありますが、文化勲章を受賞した山崎正和氏が入ってるのに驚きます。どんな文言がバッシングの対象にされたのか。 雑誌「潮」平成25年11月号に掲載した文、中国や韓国に対する日本国民のとるべき態度としてこう書いている。「日本人にとってとるべき態度は一つしかない。たとえ個人的には身に覚えがなくとも、全国民を挙げて、かつての被害国に対して謝罪を続けることである」と。全国民挙げて、永久に、中国、韓国に謝罪を続けよというのである。つまり、山崎氏は日本国民の思想、言論の自由を認めない。全国民が謝罪せよ、というのだから謝罪しない人は非国民である。これって、ファシズムの最たるものではないか。加地センセならずとも、山崎はアホかと言いたくなるでせう。文化勲章を受章した、インテリの見本みたいな人でもこの程度の浅はかな考えをもっている。


東京慈恵医大教授の小沢隆一氏は、新聞の討論記事で、近ごろはやりの立憲主義の解釈として、憲法は国家が国民を縛るものではなく、国民が国家を縛るものだ、という論を述べ、これがエスカレートして「公務員以外の国民は憲法を順守する義務はない」と言い切った。そこで加地センセがガツンと一発、だったら、憲法第三十条「国民は法律の定めにより、納税の義務を負う」はどうなるのだ。憲法を守る義務がないなら税金を払わなくても良いというのか。大学教授ともあろう者がこんなレベルの物言いしかできない。これが、左翼、リベラル言論人の知的レベルであります。ま、リベラルの原義はともかく、dameo の認識はリベラル=世間知らず、であります。


本書の中で一番厳しく馬鹿呼ばわりされてるのは、同志社大学大学院教授、浜矩子サンでありませう。安倍政権のやることは何でも反対と訴え続けた末に、アベノミクスをもじって「どアホノミクス」なる言葉までつくって反安倍論に情熱を燃やしたのでありますが、加地センセに言わせれば、すべて安っぽい感情論であって全く論理的でない。大学院教授にしてはあまりにレベルが低い言説にあきれてしまう・・そうであります。もとは経済評論家であり、それなりのポジションは得ていたと思うのですが、そこに留まらず、スキルアップしてなんとか教授の椅子を手に入れたものの、もともと学者のとしての資質がないから素人みたいな感情論しか言えない。本人もアホだけど、彼女を召し入れた大学も人を見る目がなさ過ぎる。もし、浜センセが本書を読んだら、ものすごく傷つくでせう。なんせ、学者としての価値を全否定されてるのですからね。
(2018年 飛鳥新社発行)