読書感想文

岡崎武志「人と会う力」を読む

なんとも脱力するタイトルであります。表紙の「力」の文字が心なしか細身でヘナヘナ感がする・・のは勘ぐりすぎでせうか。で、ページを開けると最初に「人と会うのはそもそも面倒で、困難なことである」という見出しが・・。 そもそも、著者は人に会って取材…

今週のお題「おすすめブログ紹介」 <朱雀の洛中日記>

かれこれ10年以上愛読しているのが「朱雀の洛中日記」。長崎生まれのおばさんが老後は京都で暮らしたいという夢を実現させた。これを機にはじめたブログが自分の趣味や感性と合い、学ぶところも多くてネット上の「座右の書」になっています。 旅好き、アー…

河村俊宏「あるBARのエッセイ」を読む

昭和36年生まれの著者は神戸で居酒屋を経営していたが、阪神大震災で店が焼失し、これを機にバー経営に転向した。なぜバーに?の理由が語られていないけど、居酒屋とは似て非なる業態だから、苦労も多かっただろうと察します。こういう転向は、はじめからオ…

岡 潔「情と日本人」を読む

日常の生活態度においては自分は唯物論ふう思考の人間だと勝手に思っているけれど、岡センセの根本思想を為す、人間は「情」で生きるべし論を読むとなぜか「そやそや」と共感してしまうのであります。論理的思考のカタマリみたいな数学になんで情が絡むのか…

川上武志「原発放浪記」を読む

原発の工事現場で働く末端労働者のレポート。雇用のありかた、労働環境、放射能リスクを避けるための規則など、私的経験を綴っている。放浪記という題名から察せられるように、原発現場の工事作業員は定住することは無く、発電所の新増設、定期点検工事の現…

高村友也「僕はなぜ小屋で暮らすようになったか」

~生と死と哲学を巡って~ というサブタイトルが付いている。雑木林や河川敷に粗末な小屋をつくり、引きこもって暮らす青年の独白を綴ったよみものであります。小屋暮らしの理由は無職無収入で追い詰められて・・と想像しがちだけど、ちがひます。♪~貧しさ…

出口治明「還暦からの底力」を読む

京大法学部を卒業、日本生命に34年勤め、幹部に昇進して退職・・という経歴から想像するエリートサラリーマン像を見事に転覆させるのがこの人の魅力です。副題に~歴史・人・旅に学ぶ生き方~と記すように会社のトップに上り詰めて達成感を味わうようなタ…

「一万円選書」岩田書店の人気ぶりが新聞記事に・・

大小を問わず書店経営のしんどさは全国共通 になっているなかで北海道砂川市の岩田書店のユニークな「一万円選書」は販売方法として定着した・・という「地味なニュース」が新聞でハデな記事になっているのでご紹介。 9月5日の産経新聞朝刊の一面と最終面(…

嵐山光三郎「悪党芭蕉」を読む

同著者の「西行と清盛」を読んだことがあり、とても面白かったので本書も期待して読んだところ、アタリでした。芭蕉の作品論や伝記は山ほどあるけど、あくびなしで読める本はない。著者はそこを意識してか、「退屈しない芭蕉論」を目指した。まず、題名から…

佐伯泰英「惜櫟莊だより」を読む

知人のIさんが「あんた、こんな本、好きやろ」と持参してくれたので佐伯泰英の本は読んだことないけど、断れずに預かりました。Iさんはモーレツな佐伯泰英ファンで、今までに購入、読破した作品が170冊というから、もう著書はほとんど読んでるといって…

後田 亨「保険のプロが生命保険に入らない理由」を読む

ジャンルを問わず、印刷物ならなんでも読む乱読趣味人でありますが、保険に関する本はこれがはじめてです。そして、書名のように、保険会社の社員は保険に加入しないのは常識と知ってビックリしました。銀行と並んで「信用」を重んじる保険会社が社員に信用…

江上 剛「50歳からの教養力」を読む

編集者のセンスが問われるダサイ題名の本で、売り上げはパッとしなかったのではと想像します。前に紹介したホリエモンの「僕たちはもう働かなくていい」のほうがよほどマシです。著者は元銀行員だった作家、50歳で退職し、作家稼業に専念、努力が実ってそ…

名画の秘密 ベラスケス<ラス・メニーナス>を読む

図書館の美術書棚で素敵な本を2冊見つけた。一冊がこれ。美術ファンならずともご存じの傑作でありますが、傑作にして謎だらけの絵というのが魅力的であります。実は、大昔、dameo が画集ではじめてこの絵を見たときも単細胞的な疑問を抱いたものです。それ…

高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」を読む

友人から図書カード1500円ぶんを頂いたので、税込み1540円の本書を買った。有り難きシアワセであります。ヘンな題名やなあと訝りつつ読みましたが、期待ハズレでした。こんなのが芥川賞だなんて・・。カードをくれた友人に申し訳ない。 昔、石原慎太…

世界一貧しい大統領「ホセ・ムヒカの生き方と言葉」を読む

10年くらい前に首題のフレーズで有名になった元ウルグアイ大統領、ホセ・ムヒカの人生を綴ったムック版。 小国の権力者はたいてい「独裁者」として登場するけど、この人は「フツーのおじさん」というキャラクターで有名になりました。権力者を目指すことと…

反田恭平「終止符のない人生」を読む

万事に保守的な日本の音楽界にようやく革新派が現れた。大歓迎であります。2021年のショパンコンクールで第二位となり(日本人では最高位)一躍スターになった。いま、ピアニストでチケットが即完売になるのはこの人と辻井伸行の二人だけかもしれない。…

堀江貴文「ぼくたちはもう働かなくていい」を読む

AIやロボットの最新情報をわかりやすく解説する本として手軽に読めるのが良い。かつ、題名のように刺激的な表現で売り上げをアップする点、なかなかの商売人でもあります。難点をいえば、先進技術を紹介するぶん本の賞味期限が短いことで、古本になれば二…

田中泰延「読みたいことを 書けばいい。」を読む

文章指南の本はたくさんあるけど、これは個性的かつ説得力のある本です。著者は電通に24年勤めたコピーライターで退職しては「青年失業家」と称してフリーで仕事をしている。どれだけ稼いでるのか不明なれど、ちゃんとメシが食えてるのなら大方のサラリー…

倉橋由美子「大人のための残酷童話」を読む

発想がユニークなので話題になった本ですが、読まずじまいで忘れていたところ、ある日、古本屋の100円ワゴンでみつけました。発売以来三十数年ぶりに購入したわけです。 期待して読んだら・・なんか「ハズレ」の印象です。誰でも知ってる童話のパロディだと…

大石あき子「維新ぎらい」を読む

橋下徹が大嫌い、というdameo の心情をくすぐる、こんな本が出ています。著者、大石あき子氏は大阪市出身の衆議院議員で所属は「れいわ新撰組」。超マイナー政党の議員が只今躍進中の「維新の会」と黒幕の橋下徹をボロクソに批判している。そのパワーはなん…

向田邦子「思い出トランプ」「男どき女どき」を読む 

著者、向田邦子は作家より、テレビドラマの脚本家として有名だった。しかし、500本以上こさえたというテレビドラマ、一本も見ていないので、そちらは見当がつかない。ドラマで人気を博したのは「寺内貫太郎一家」や「阿修羅の如く」らしい。 この2冊の作…

太宰治「富嶽百景」を読む

山登りなんかまるで興味無さそうな太宰治の富士山論であります。書き出しはこんなふうに始まる。「富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晃の富士も八十四度くらい、けれども、陸軍の実測図によって東西及び南北に断面図を作ってみると、東西縦断は頂角百二…

司馬遼太郎「この国のかたち」(四)を読む

軽重いろいろなテーマがあるが、一番チカラを入れて書いたと思われるのが「統帥権」というテーマ。これの乱用が軍国主義を生み、日本の開戦~敗戦に至ったのでありますが、著者は、軍部がいつ頃から、なぜ、暴走してしまったかをエッセイとして書いている。…

高橋源一郎<「読む」って、どんなこと?>を読む

文字を読む、文を読む、作品を読む・・文字を通じて書き手の人生を読む。チラシを読む単純作業から人の心を読む難解なことまで、あらゆるコトを読みまくる日々。そこをクセ者、高橋センセは子供に諭すような文体で読ませます。 43頁「もう一つ、簡単な文章を…

小林惠子「聖徳太子の正体」を読む

聖徳太子は外国人だった・・の衝撃珍説 20年くらいまえに「太子快道」なるウオーキングコースをつくろうと思い、太子に関する本を30冊くらい読みました。そのなかで一番興味深かったのが本書です。え?・・太子は外国人やて?、そんなアホな。であります…

亀田潤一郎「稼ぐ人はなぜ長財布を使うのか」を読む

22頁「もちろんピッタリというわけにはいきませんが、これまで多くの社長の財布を見てきて、概ねその人の年収というのは、今使ってる財布の購入価格の200倍に匹敵する、という事実に気づいたのです」 20万円の財布を使ってる人なら、その人の年収は4000万円5…

重松清・鶴見俊輔「ぼくは こう生きている 君はどうか」を読む

親子ほど年の差が大きい作家と哲学者の連続対談を収録したもの。書名から察すると若者向けの生き方啓蒙書のように思えるけど、オジンが読んでも勉強になりました。驚くのは鶴見センセの記憶力の凄さで、自分の子供じぶんや若い時代の出来事から人名、履歴が…

中河与一「天の夕顔」を読む

図書館で中島京子の本を探していたら、同じ棚の隅にはぐれモノのようにこの本があった。お、これ、昔に読んだことあるわ、と借りて帰る。嗚呼、懐かしい文章ではありませんか。イヤハヤ、60年昔はこんな本読んでいたのかとしばし感慨に耽ったのであります…

イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む

文庫版が1998年に発行されてから2011年までの13年間に26刷を数えている。地味ながらロングセラーを続ける理由は何だろう。想像でいえば、イギリス人のおばちゃんのものすごい行動力、観察力と、それにしてはクールな文章表現が読者に大きな信頼…

山本 尚「日本人は論理的でなくていい」を読む

◆お知らせ・・・今まで二日おきくらいで記事を投稿していましたが、近日、視力が衰えて読書スピードがいっそう遅くなってしまいました。もう長編は読みたくない(読めない)がホンネです。今月からは月に10本以内に減らして細々続けたいと思います。引き続…