読書感想文

平凡社編集「作家の酒」を読む

こんな本を企画すること自体が「酔狂」のなせるワザとしか思えないけど、読むよりは作家諸氏の酔態を楽しむ本です。女性有名作家にも大酒飲みがいると思うのに登場しないのは酔態を読者に知られたくないゆえか。 作品を一作しか読まなくても、このオッサン、…

時実新子・玉岡かおる「モノ書く女への道」を読む

dameo の友人、A子さんが時実新子のお弟子さんだった、という、ささいなご縁で読んだ本。玉岡かおるの作品は「お家さん」を読んだだけです。この育ちや個性のちがいがハッキリしている二人がン十時間?対談して文学論や人生論をぶつけ合った。あるページで…

陳舜臣「唐代伝奇」を読む

千年以上の昔、中国は唐時代に著された物語を十七編集めたもの。その中で日本にも伝わり、現在でも良く知られているのは「沈中記」「郭翰と織女(牽牛と織女)」「杜子春」の三つです。これらのうち二つを紹介します。 「沈中記」=「邯鄲」 「沈中記」は日…

日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?

最近読んだ本の中では深刻度一番。虐待された子どもが親への恨み辛みを綴った手紙百人分を掲載している。書名の後半「そんな親なら捨てちゃえば?」の語は本書を企画した人の言葉(主張)である。加害者である親と義理人情で和解するより「捨てちゃえ」と言…

森岡浩「名字でわかる日本人の履歴書」を読む

NHK「日本人のお名前」の常連ゲスト、森岡センセの著書。この本は、従来のように家系(系譜)をさかのぼる時間軸の研究ではなく、地理的分布を主にした調査の成果なので、地理好きには楽しく読めます。田中さんや佐藤さんといった名前がなぜメジャーなの…

短編名作を読む  武者小路実篤「お目出たき人」 志賀直哉「城の崎にて」「小僧の神様」

古本屋の「よりどり一冊100円」のワゴンで探した本。計2冊、200円の投資にしてはずいぶんトクした感のある名作です。旧人類にとっては、今どきの芥川賞作品なんかより十倍はネウチがあります。以下、名作三編をご紹介。 ■武者小路実篤「お目出たき人」…

石原慎太郎 絶筆「死への道程」を読む

本文を記したのは令和三年十月十九日。その約三ヶ月後に亡くなった。 著述の半年前、千葉の重粒子センターで膵臓癌細胞を焼き尽くしたはずだったが再発していた。そこで担当医師に自分の余命はどれくらいか尋ねたところ「まあ、三ヶ月くらいでしょうかね」と…

岡野雄一「ペコロスの母に会いに行く」を読む  

著者の認知症の母親をネタにした「介護マンガ」。長崎で自費出版した500冊がスタートで、後に西日本新聞社の目にとまり、地域でベストセラーになった。さらに映画化も決定、有名人になりました。 介護マンガと書いたけど、母親は施設入居者なので、家族がつ…

一関開治著「記憶が消えていく」                  ~アルツハイマー病患者が自ら語る~ を読む 

自分はアルツハイマー病なんかにならないと自信をもって言える人は一人もいないはず。なる、ならないは、ほとんど運の良し悪しで決まるといってもいいくらい、予測しがたい。ならば、怖がるだけより、実態を知って予備知識とし、自分自身、また身内や友人が…

遠藤周作「ルーアンの丘」を読む  

ルーアンはフランスの都市の名前。本書の略図で見るとパリの北西、セーヌ川の下流にあたる。著者が戦後初の仏蘭西留学生として訪れ、三ヶ月ほど滞在したところだった。かのジャンヌ・ダルクはここで短い生涯を終えた。 27歳の遠藤センセが書いたのだからロ…

太田尚樹「尾崎秀実とゾルゲ事件」を読む

ロシアがウクライナに攻め込んでプーチンの評価はガタ落ち、ロシア国内でも反戦デモが起きている。この本は今から80年前に起きた日本とソ連間のスパイ活動に関するドキュメントですが、もし、中学、高校の教科書に載っていないのなら60歳以下の人はほと…

内館牧子「毒唇主義」を読む

先月紹介の「すぐ死ぬんだから」に続いて読んだ内舘作品。これは週刊誌や会報などに書いたエッセイ、コラムをまとめたもの。著者、編集者にとって一番楽ちんな本作りかもしれません。そのせいか?表紙裏の著者紹介文で三菱重工を「三菱重厚」と誤植している…

 宮崎市定「隋の煬帝」を読む

著者名を見て、堅苦しい中国史の話なのではと想像したけど、読んでみれば平易な内容だったのでホッ、であります。解説によれば、著者が本書を書いたのは京都大学を定年退官したあとで、教授の肩書きがとれたから気楽に書いたのではということでした。 隋の煬…

読書感想文・・新聞に投稿しませんか

産経新聞関西版の夕刊に「ビブリオエッセイ」なる欄があって読書感想文を募集しています。作文力を試したい方は応募してみませんか。掲載するだけでなく、月に一回「月間賞」の選考があって、書評家の江南亜美子さんとジュンク堂難波店店長、福嶋聡さんが講…

朝井まかて「恋歌」を読む

この本を読む気になったのは、昔々、吉村昭の「天狗争乱」を読んだから。本書の主人公「登世」は水戸藩の天狗党に属する武士の妻であり、ゆえに水戸藩の内輪もめに巻き込まれて対立勢力から酷い仕打ちを受ける。その有様が後半に延々と詳しく描かれていて、…

永江朗「不良のための読書術」を読む

「本を最後まで読むのはアホである」と過激な惹句で謳っていて著者は相当にアンチな人かと想像したが、読めば、中身は、ま、それほどではありません。読書のハウツーよりライター稼業は儲からない、なんとかせにゃ・・というもっと所帯じみた愚痴が並んでい…

ニコラス・スロニムスキー編「世界名曲悪口事典」を読む

ひえ~、こんな本もあるのか、と思わず手に取り、借りて帰った本。ベートーヴェンからショスタコーヴィチに至る百余年のあいだに活躍した作曲家の作品をケチョンケチョンにくさした評論の抜粋集であります。 さっそく、リヒアルト・シュトラウス曲の批評文を…

内館牧子「すぐ死ぬんだから」を読む

半分くらい読み進んでも平凡なホームドラマの印象だった。もうヤメるかと思って最後にページを繰ったら大事件勃発、で最後まで読まされてしまいました。主人公は78歳の老妻ハナ。夫の岩造とは自他共に認める仲良し夫婦であったが、その夫は突然亡くなって…

吉田類「酒場歳時記」を読む

好きなことをして、それでメシが食える・・のが理想の人生なら、この著者はかなりいいセン行ってます。人生の裏側に「辛酸なめ男」の場面があったとしても、まあ、それは知らないことにして、とりあえずはうらやましいオッチャンであります。自称、画家、イ…

狩野博幸「江戸絵画の不都合な真実」を読む

こんな地味な本、誰が読むねん、と思って手にしてみたら、いやもう十分に面白い。読んでヨカッタと得した気分にりました。江戸時代の著名な絵師の人物像を著者独自の観点と評価で著しており、世に流布している「定説」 にイチャモンをつけたる、という意図が…

村上春樹「風の歌を聴け」を読む

はじめて読む村上作品。軽薄感満点のタイトルとおしゃれな装幀、そして、芥川賞狙い?の文体でそこそこリッチな若者の生活が描かれる。最後まで読み通せたのは読みやすい文章とテンポの良さのおかげで、もったいぶった表現や屁理屈が無いのが良い。こんな本…

斉藤光政「偽書<東日流外三郡誌>事件」を読む

「東日流外三郡誌」は「つがるそとさんぐんし」と読みます。著者は斉藤光政。ありもしない歴史をあるかのように装って、無名の男が捏造した古文書の題名です。本書はその発見からミジメなラストまでの顛末記です。 青森県は津軽の片田舎に、和田喜八郎という…

竹内薫「99,9%は仮説」を読む

昔、本書がロングセラーになったのは、仮説の説明の最初に「飛行機はなぜ飛ぶか」の問題をもってきたからですね。うまい、と思いました。じっさい、この後のモロモロのテーマはあんまり面白くありません。 さて、飛行機はなぜ飛ぶか。そんなもん、ライト兄弟…

佐藤 優「友情について」を読む

興味をもったら書かずにはおれない・・は作家の因業かもしれないが、この本で「書かれた」のは著者の高校時代の友人、豊島昭彦さんであります。豊島さんは県立浦和高校から一橋大学を経て日本債券銀行(現在のあおぞら銀行)に就職、二度の転職を経てまもな…

宮本輝「道頓堀川」の現場を訪ねる

同氏には「泥の河」と「螢川」という傑作があり、二作とも読んでいたのでこれも読んでみました。感銘の大きさでは前記の二作に劣るけど、庶民の生活哀感漂う佳作だと思います。今回は本書の感想文ではなく、道頓堀川のほとりで主人公の武内が経営する喫茶店…

ヴァージニア・ウルフ「病むことについて」を読む

西成の山王通り商店街にあるカフェ「COCOROOM」の店先のダンボール箱に捨てられていた本。他にもボロ本が20冊くらいあったけど、色焼けした哲学書など難解本ばかりで、これが一番やさしそう?に見えた。V・ウルフの本を読むのははじめてです。エ…

「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能界人脈」を読む

この本を読んだ人は全部「パソナ」と「南部靖之」が嫌いになる。なぜなら、悪口しか書いてないから。人材派遣業というビジネスについては知識も興味もなかったので、内容によっては途中でやめようと思ったけど、政財界裏話ルポとして週刊誌を読む感じで完読…

勝海舟「氷川清話」を読む

明治維新を成し遂げた偉人の一人として、この人の名を知らない人はいないのでありますが、その割には、ヒーローとして小説や映画の主役になることが少ない。坂本龍馬や西郷隆盛に比べると人気の低さは明瞭です。なんでだろー? dameoが考えても答えなど出な…

佐藤優氏・・はじめてTVで拝見

先週「君たちが知っておくべきこと」という本の紹介で登場してもらった佐藤氏が珍しく?TVに出ていたので拝見しました。眼鏡をかけているのでややじいさんふうに見え、声は想像したよりおとなしい感じでした。番組はBS「フジ プライムニュース」です。鈴…

朝井まかて「グッドバイ」を読む

Sさんから恵送された新聞連載小説。丁度一年分をまとめるとこんな厚さになるのかと357頁のヴォリュウムを確かめたものです。連載小説って一回の字数がきっちり決まってるので、そのまま繋げて単行本にすると継ぎ目が気になったりして・・。そこんところ…