読書感想文

能勢初枝「ある遺書~北摂能勢の安徳天皇伝承~」 

安徳天皇は生きていた!? 久しぶりに読書感想文の投稿です。歴史好きのSさんから手紙をいただいた。同封されてた史跡案内のチラシに来見山「安徳天皇 御霊跡地」の題があり、内容を読むと、かの源平合戦の最終戦、壇ノ浦の戦いで幼い安徳天皇は祖母とともに…

藤田孝典「棄民世代」

10年以上前?「下流老人」という本を著した人が、この本ではかの「氷河期世代」の困窮ぶりを調査し、問題提起した本。読めば問題の深刻さに気が滅入ってしまうのですが、さりとて「こんな施策で解決できる」という提案もない。せいぜい小泉純一郎や竹中平…

佐藤大介「13億人のトイレ」

この本を読んだ人のほとんどはインドという国が嫌いになるのではと懸念する。好きになる人はゼロでせう。その理由がインドの国家的恥辱といえるトイレ問題であります。タイトルの「13億人のトイレ」を具体的に述べるとインド人13億人中、5億人はトイレ…

斎藤美奈子「学校が教えない ほんとうの政治の話」

自分の体験で言えば、今まで友人、知人と政治に関して議論した記憶がほとんどない。たぶん、日本人の多くが政治的議論を好まないのではないか、と思っています。なぜなのか?。著者は明快に答える。「贔屓がないからです」 なるほど、そういうことですか。虎…

吉本隆明「ひきこもれ」 ~一人の時間をもつということ~

子供から中高年に至るまでのひろい世代に普及してしまった「ひきこもり」。ふつうはこういう人たちに「ひきこもらないで」と訴える本が多いけど、さすが吉本センセは真逆に「ひきこもれ」とハッパをかける。ひきこもり・・一人の時間をもつことの意義や大事…

馳星周「少年と犬」

本猿さんの感想文に触発されて読みました。犬が主人公の物語なんて、もしや小学生?のときに読んだ「フランダースの犬」以来か。ふる~~~~~~~。 雑誌「オール読物」に連載した6編の短編小説をまとめたもので、半分くらいはアホな人間とカシコイ犬の物…

礒井純充  本で人をつなぐ「まちライブラリーのつくりかた」

このブログではときどき「まちライブラリー」と言う言葉が出てきます。市民の発想、企画でつくる民営の図書館で、2011年以後、全国で1000近くの大小の図書館が生まれ、いくつかは既に姿を消しています。この生みの親が著者の礒井(いそい)氏です。 …

岩瀬達哉 「パナソニック人事抗争史」

世に伝わる「経営の神さま」といえば、まずは松下幸之助を想像する。これに文句を言う人はいないけれど、神さま幸之助の次の社長は神さまではなく、さらに次の社長・・となるとレベルダウン著しく、要するにタダのヒトしか現れなかった。初代が神さまに祀り…

古本市で明治時代の教科書を買う

春と秋に四天王寺で催される古本祭り、お目当ては「100円均一」台と「和綴じ本」の台。和綴じ本は従来300円均一だったのに今年は400円に値上げされた。100年前の古本も値上げとは・・・。 で、より慎重に選んで買ったのが明治34年(1901)発行の国語教科書。…

神舘和典・西川清史「うんちの行方」

「今日もニコニコ乱読味読」がうたい文句なので、なんでも読むのであります。こんなキワモノ企画を上記二名の著者はコネなしで新潮社編集部へ売り込みに行った。無礼者めが!と一蹴されるかと思いきゃ「ええん、ちゃう?」で出版決定。なんと言いますか・・…

坂口安吾「狂人遺書」(大活字本)

安吾の作品は「堕落論」など、小品を集めた文庫本一冊を読んだだけなので何十年ぶりの再会です。その前に坂口安吾の名前を知ってる人・・10人に一人くらいですか。著書を読んだことある人・・100人に一人くらいかなあ。 書名「狂人遺書」の狂人とは豊臣…

廓 正子  「まるく まあ~るく 桂枝雀」

一番好きな落語家は誰?と問われたら桂枝雀(故人)と答えます。 その枝雀の40歳過ぎまでの半生記。年譜で自分と同い年であること知った。昭和20年の米軍空襲で街のなか逃げ惑った経験も同じ。(枝雀の住んでいたのは神戸市灘区だった) 子供じぶんから人を…

学研・辞典編集部「カタカナ新語辞典」

戦前生まれはヨコ文字に弱くてこういうトラの巻が必要であります。おまけに加齢による記憶力減少でなんでもない日常語を忘れたりする。さらに、情報関連用語はヨコ文字氾濫状態でこの辞典が大活躍、と書きたいのですが、残念ながら活躍してくれない。なんで…

みうらじゅん「ない仕事の作り方」

みうらじゅんさんって何屋さん?って思っていましたが、答えは「ない仕事を作る」のが仕事だというのがご本人の説明。いかなるカテゴリーにも属さない新しい仕事を創造してメシのタネにする。仕事を選ぶのではなく、創造する。いやあ、カッコイイですなあ。…

村瀬孝生・東田勉「認知症をつくっているのは誰なのか」

介護のプロ二人の対談集。このブログの読者に当事者はおられないと思いますが、身内や知人に認知症の方おられるかも知れません。dameo は明日にも発症するかもしれない。意味不明な文を書きはじめたら「やっぱりな」と疑って下さいまし。本書は弱視者用の大…

鈴木大介「老人喰い」

オレオレ詐欺などで高齢者を騙して金を奪うグループに接触し、内情をレポートした読み物。最近は騙して奪うだけでなく、殺して奪うなど凶悪化して社会不安は更に高まった。初期のオレオレ詐欺は単純に騙してナンボというシンプルな犯罪だったが、年月を経て…

小松成美「さらば勘九郎」 ~十八代目中村勘三郎襲名~

本書の発行は2005年。この年に勘九郎は十八代目勘三郎を襲名し、華やかに襲名披露興行を行った。しかし、そのわずか7年後、~さらば勘三郎~という酷いことになるとは・・・。著者も世間の歌舞伎ファンにも、まさかのまさか、平成時代で一番悲しい人気…

内舘牧子「必要のない人」 (大活字本)

最近、内舘センセの消息を聞かなくなりましたが、もう引退されたのでせうか。本書は著者が初の短編集として著したもので1998年作だから、もう25年も昔の作品。表題の「必要のない人」は大企業勤めのサラリーマンが定年前にリストラの憂き目に遭い、女…

鈴木淳史「わたしの嫌いなクラシック」

よくもこんなしょーもない本を出版したもんだ、と感心しつつ読みました。著者は1970年生まれだから出版時に35歳、この若さで、音楽世界を知ったかぶりでボロクソにけなしてる本であります。言うまでも無く、書名はクラシック音楽自体を貶してるのでは…

織田作之助「木の都」 //// 井伏鱒二「山椒魚」 

木の都 50年ぶり?くらいに再読。本を読む楽しさの一つ「しみじみ感」満点の短編であります。主人公は区役所に用事があって10年ぶりに大阪市天王寺区の故郷を訪れ、子供じぶんのあれこれを思い出しながら昔の住民の消息をたずねる。ただそれだけの話であ…

村上春樹「不思議な図書館」

村上春樹が童話も書いてるなんて知りませんでした。創作の間口が広いってトクであります。購読者のほとんどは書名ではなく、著者名が村上春樹だから買うにちがいないからです。ハガキサイズの小型本で100頁、イラストがあるので本文は90頁以下の短文で…

柳美里「貧乏の神様」

副題<芥川賞作家 困窮生活記>とあるように、世間でそこそこ名を知られた作家の暮らしが実はとても厳しいことをセキララに描いた、もう半分ヤケクソ気分で綴った本。去年の年収ン百万円という数字は出てこないけど、本日の所持金2000円ナリ、てな場面は…

夏目漱石「猫の墓」の原稿を拝見

先月末に養老孟司著「まる ありがとう」という愛猫の追悼本を紹介しました。先日、なんばのまちライブラリー(民間の図書館)へ行くと玄関のショーケースに夏目漱石の「猫の墓」の原稿(複製・原本は大阪公立大学の収集品)が展示してあった。漱石の手書き文…

垣谷美雨「七十歳死亡法案、可決」

こんな小説があること知らなかった。図書館で知り合った人に「これ、どない?」と奨められて拝借した。んまあ、なんとえげつないタイトルでありませう。時の与党が強行突破で可決した「老人は七十歳になったらみんな死んでいただきます」という、とても分か…

島田裕巳「捨てられる宗教」<大活字版>

この一年のあいだに読んだ本の中では一番刺激的な内容の本でした。この先の「生き方」を真摯に考えてる人には参考になると思います。 著者は死生観について新しい概念を考えだした。現在、普通に暮らしてるひとびとの死生観を<A>とし、これから先の長寿社…

片岡義男「自分と自分以外」~戦後60年と今~

作家の名前は知ってるけど作品は読んだこと無い・・ケースはいっぱいあって、片岡センセもその一人。今回は年令が自分と同じ(1939年生まれ)であるため、興味をもって読みました。平均3~4ページのエッセイとコラムをまとめたもので、作家というよりジャ…

養老孟司「まる ありがとう」

解剖学者、養老センセ宅に18年飼われた猫、まるへの追憶エッセイ。一般人が書けば目いっぱいセンチメンタルになりそうなテーマですが、そこは学者、哀しみをセーブしてクールな「観察」記にまとめています。100枚以上ある写真は秘書の女性が撮影したも…

佐藤 優「危ない読書」 ~教養の幅を広げる<悪書>のすすめ~

久しぶりに佐藤センセの本を読みました。手にした人の気をひく書名でありますが、著者、出版社の企画ネタ切れ感がしないでもない。 紹介された本はヒトラーの「わが闘争」文部省教学局の「国体の本義」クラウゼヴィッツ「戦争論」 倉橋由美子「パルタイ」 D…

小沢康甫「暮らしのなかの左右学」

自然界にも人間社会にも<左右問題>がたくさんあって、しかし、たいていは深刻に考えずに受容している。殆どの左右問題は暮らしに溶け込んでいる。 それでも、なんでやねん、と気になる左右問題がある。陸上のトラック競技はなんで左回りに走るのか、不審に…

小林よしのり(編)「日本を貶めた10人の売国政治家」

えげつない題名の本書が発行されたのが2009年、もう14年も昔のことでした。ということは、現在、40歳の人なら当時は26歳、10名の政治家のことはほとんど知らないでせう。今でも活動してるのは竹中平蔵だけです。逆にトップスリーは現在も存命で、<売…