dameo <リニア中央新幹線不要論> ~その3~

◆肝心の開発コンセプトが時代遅れになってしまった
 数年後に品川~名古屋間が開業しても東京~名古屋~新大阪間の所要時間は現在よりほんの少し(20分程度)短縮されるだけです。その代わり面倒な乗り換えが必要になり、乗り心地も新幹線より悪くなる。「より早く、より快適に」と謳ったリニアの先進性がほぼ消えてしまいます。
 それはひどい偏見だ、誤解だというなら、リニア新幹線にはカクカクシカジカ、これだけの社会的、経済的意義や効果がある。10兆円を投じる価値があると説明してほしい。


◆コロナ禍もリニアのコンセプトを変えてしまった
 リニア新幹線の開発コンセプトには、人と人の交流においては「FACE TO FACE」が大切だ、という概念があります。その通りで、これに異論はありません。しかし、なんということか、かのコロナ禍がこれを変えてしまった。前世紀の計画時点では「オンライン」という思想や技術が未熟で、たとえば「G7」のような重要な会議をオンラインで、とは誰も考えなかった。


この先の時代、ビジネスのために5分、10分を惜しんで東京から名古屋へ、大阪へはせ参じる場面がどれほどあるでせうか。本当にFACE TO FACE が大事なのは、ビジネスシーンより父母のもとへの里帰りではないかとさえ思えます。しかし、リニア新幹線はどう考えてもビジネスシーン優先の思想で計画されています。(予想では利用の70%がビジネス需要になっている)


本書の著者はリニア新幹線の必要性について以下のように危惧しています。

1・人口減少で需要が低下する
 人口変動予想では2008年の1億2800万人をピークに減少が続き、2040年には1億1000万人程度に減る。減少だけでなく高齢化が顕著になり、生産年齢人口は現在より1000万人以上減る。そんなの地方の話で都市圏は大丈夫と思いがちだが、実は東京でも人口減少の兆しが有り、過去のように「増加が当たり前」ではなくなった。また、2040年には3人に一人が65歳以上の高齢者になる。

2・働き方改革で輸送需要が低下する
 3年に及ぶコロナ禍はリニア新幹線建設推進に大ショックを与えました。テレワークなど、働き方改革が一気に進み、FACE TO FACE は悪者扱いにされてしまった。逆にテレワークの進歩で会議や打ち合わせが円滑にできると、東京~大阪をあたふた往来する必然性は薄れ、ビジネス需要を減らしてしまった。

3・人手不足でリニアのインフラ維持が困難になる
 なんとかリニアの工事を完成できても,それを維持する技術と人材が必要です。トンネル区間が400kmにも及ぶリニア新幹線では安全維持のために屋外区間より多くの人手,費用がかかる。これを怠ると、あの「笹子トンネル」事故のような悲惨な事態が起きます。こんな暗黒の職場に優秀な人材が求められる・・いくら技術を進歩させても最後は人間の責任。人集めの苦労が予想されます。


このような予測から、著者はリニア新幹線の建設、開業に反対しています。技術的困難が克服出来ないうえに、営業面でも当初予想した需要が見込めず、危険で儲からない交通機関になるというのです。 知識不足の自分が考えても、この危惧に堂々と反論するのはかなり難しいと思います。開業時に自分が生きてる可能性はゼロに近いけど、ま、乗りたいと思いません。


現況に鑑み、JR東海が再度「需要予測」をしたら、どんな結果が出るだろうか。只今は国民の99%は dameo 並の無知状態なので恣意的な結果を出すのは容易だけど、あとで泣きを見ないためにも正直な情報提供が必要です。
 本書で著者が懸念している超伝導磁石駆動用のヘリウムガスは100%輸入に頼っているため、輸入が滞ればリニア新幹線は営業できない。これに対してJRはしっかり手当してあるから心配無用と明言してるようですが、このさき、ウクライナ侵攻のような思いがけない事案が生じても大丈夫なのか、保証があるとは思えない。本書を読む限り、著者が意図的に読者の不安を煽ってるとは思えないので、心配性に貧乏性を加えた dameo はさらにマイナス思考になってしまいます。(つづく)