今日もニコニコ乱読味読

~レガ爺 dameo の泡沫ライフ~

浦久俊彦 「悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト」             ~パガニーニ伝~

 読みたいと思っていたパガニーニの伝記にようやく出会った。18~19世紀にヨーロッパで大活躍したニコロ・パガニーニの天才ぶりと波乱に満ちた生涯をコンパクトにまとめた本で、興味津々だからすいすい読めました。


 異様な風貌と黒づくめの衣装の印象などから「悪魔」呼ばわりされてしまったパガニーニ。外見だけでなく、演奏能力も超絶技巧だったために、人間ワザではない、もはや悪魔的である、という意味もあるから悪魔は非難だけのことばではない。(しかし、わがまま、守銭奴、女たらし、といった悪評もあった)本書を読む限りでは、もう、未来永劫パガニーニ以上の演奏者は出ないのかと寂しい気にもなる。せめて彼が100年後に生まれていたら録音が聞けるのになあと残念でならない。


 パガニーニが頭角をあらわした1800年代前半の演奏会はまだ貴族や一部の富裕層の趣味で庶民は縁がなかった。しかし、人気が高まると庶民のあいだにまで「悪魔的名人」の評判が広まり、演奏会場は常に混乱した。当時は現在のようなチケット販売システムなんかなかったからお金のない庶民はなんとかタダでホールへ潜り込もうとする。場内は喧噪を通り越して乱闘騒ぎまで起きた。


 なんとか騒ぎを静めて演奏が始まると、場内の雰囲気は一変、今まで聴いたことのない圧倒的なワザと迫力に聴衆は心を奪われ、今ふうに言えば「失神しそう」なくらい魅了された。はじめはイタリア国内での巡業だったが、通信と言えば馬車便しかなかった時代なのに周辺諸国に「悪魔」のウワサが伝わり、あちこちから興業の声がかかった。現在のフランス、ドイツ、オーストリア、イギリス・・どこへ行っても大成功だった。


 当時の有名作曲家たちも彼の演奏を聴いた。シューベルトシューマン、リスト、ベルリオーズなどが実際に聴き、みんなメロメロになったらしい。まだ若かったリストなんか「僕はピアノのパガニーニになる」と大コーフンしたことが記録に残っている。現在、リストの作品として知られる「ラ・カンパネラ」はパガニーニの「ラ・カンパネラの主題による華麗なる大幻想曲」をピアノ曲にアレンジしたものだ。


 ロマンチストに人気のあるドイツの詩人、ハインリヒ・ハイネはこんな印象を綴っている。「地獄から上がってきたような暗い風体の人間が舞台に現れた。それが黒い礼服に包まれたパガニーニであった。黒の燕尾服と黒のチョッキはおどろおどろしい形で、地獄の作法によって決められたベルセボネーの館のものであるかのようだ。やせこけた足のまわりで黒いズボンが落ち着きなくだぶついていた。彼が一方の手にヴァイオリンを、もう一方の手に弓を下げてもって、ほとんど床に触れそうになりながら、とてつもなく深いお辞儀をすると、彼の長い手はいっそう長くなったように見えた。あの懇願するような目つきは瀕死の病人の目つきなのであろうか。それとも、そこにはずる賢い守銭奴のあざけりの下心が含まれているのであろうか」この文章でパガニーニの舞台姿をおおむね想像できる。異様な体格と黒づくめの衣装・・常識とは逆にあえて「悪魔」の姿を自己演出したのは大成功だったといえる。


 「悪魔」は延べ数年に及ぶ巡業で莫大な金を稼いだ。はっきりした金額は不明だが、現在の金で何十億円といった金額らしい。こんなにガツガツ稼いだのは、一人息子、アキーレに財産を残してやりたいという親心ゆえだが、もう一つ熱を入れたのが優秀な弦楽器のコレクションだった。彼が生涯愛用したのはグアルネリだが、ストラディヴァリウスのヴァイオリンやヴィオラ、チェロも買い、弦楽四重奏曲を演奏する世界最高の四重奏団づくりを夢見ていた。


 ここまで「悪魔のような」パガニーニのあらましを書いてみた。200年前の遠い異国のアーティストの話で現代の日本人にはなんの関係もないように思えるが、実はご縁がありました。上に書いたパガニーニがコレクションした四重奏のための弦楽器、実は日本が購入していた。楽器はいったんアメリカの金持ちに買い取られ、長らくクリーヴランド弦楽四重奏団が使っていたが、1994年、日本音楽財団がこれを16億円で買い取り、東京カルテットに貸与した。一挺平均4億円であります。当時はまだバブル景気の余韻があった時代だからこんな破天荒なことができたのかもしれない。パガニーニが苦労して集めた世界最高の弦楽器はいま日本の財団の所有物なのであります。(東京カルテット解散により、今はオーストリアのハーゲン四重奏団に貸与している)


 先日、パガニーニ由来の曲がTVのCMに使われているのを聴いてうれしくなった。なんのCMだったのか覚えていないが、ラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による狂詩曲」の一節でとてもロマンティックな旋律だ。当然、何百万人もの人が聴いていて、なんか知らんけどええ曲やなあと感じたのではと想像する。本当はアレンジしたラフマニノフの功績だけど「悪魔くん」の作品がTVに流れる時代になったのであります。(2018年 新潮社発行)


参考 <東京カルテット>
   米・ニューヨークを拠点とする弦楽四重奏団。1969年にジュリアード音楽院に留学していた原田幸一郎、名倉淑子、磯村和英、原田禎夫桐朋学園卒業生で齋藤秀雄門下生4名によって結成。コールマン・コンクールや70年のミュンヘン国際コンクールの優勝で一躍脚光を浴び、ドイツ・グラモフォンなどとも契約。世界トップクラスの演奏を誇り、世界ツアーやベートーヴェン弦楽四重奏曲の全曲演奏も行なう。『セサミ・ストリート』などの米TV番組にも出演。メンバーチェンジを重ねながら活動を継続するも、創設メンバーの磯村らの2013年6月の退団をもって解散。

 

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■ 業務スーパーのお買い得品 ~今日もニコニコ節約暮らし~  

 安さがウリのこの店もジリジリ値上げが続いて一年に一割くらいは高くなったような気がする。安かろう・悪かろうのイメージがあって軽蔑の眼差しを向ける人も多いが、慎重に選べば○ビ人間には役立つ店であります。
 当店の安売りイメージの象徴のように思われている食パンは69円(税別)で昨年より2円値上げされたが、一般価格の半額に近いのではないか。


写真の左は「ミックスベジタブル」1kg入りで268円(ベルギー産) 右は冷凍しまほっけ。半身4枚で318円 (アメリカ産)。他に、オクラやカボチャなどは冷凍モノを買うのが習慣になってしまった。安いだけでなく、包丁なしで使えるのが助かります。

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