2021-01-01から1年間の記事一覧

小田嶋 隆「上を向いてアルコール」を読む

~「元アル中」コラムニストの告白~ プロの物書きは何がトクかといえば、本書のように自分の人生途上での大失敗、大ミジメ経験でさえ錢もうけ(出版)のネタにできることでありませう。(無名素人が同じことやっても恥をさらすだけです)有名コラムニスト、…

「相撲」江戸時代は女人禁制ではなかった

著者、三田村鳶魚(みたむらえんぎょ)は江戸風俗研究の大家で膨大な文献を残したが、そのコンパクト版が稲垣史生編集の「江戸生活事典」。コンパクトといっても500頁に細かい文字がぎっしり詰まっているので読むのは大変であります。自らは明治生まれな…

百田尚樹「モンスター」を読む

この作品、映画化されたそうだが知らなかった。不美人がトコトン整形手術を施して抜群の美人に生まれ変わる。そして、不美人時代に軽蔑、嘲笑した男や世間へ復讐を始める。しかし、一人だけ憎めきれない、恋心を抱いた幼友達の男がいて・・。 著者、百田セン…

キタとミナミ  ミュージアム巡りの旅 (7)

青森二日目雪の八甲田山・・ワ・ラッセ(ねぶた展示館)・・怪しいバー「F」 八甲田山は冬景色 6月1日 今日は、午前中八甲田山へ、午後は青森駅前の「ワ・ラッセ」を訪ねます。早起きして、駅前からJRバス十和田行きに乗ります。路線バスだけど観光バス…

島田荘司「写楽・閉じた国の幻」を読む

万年閑人、駄目男のために、Tさんからプレゼントされた本。美術ファンなら誰しもご存じの「謎の絵師・写楽」問題をミステリー作家が独自の発想で追求、斬新というか、トンデモ案というか、とても面白い小説に仕立てた作品です。小説とはいえ、写楽に関する過…

佐伯啓思「反・幸福論」を読む

幸福論というのは、中身がピュアであるほど哲学的迷宮に入り込んでしまい、凡人には「で、何の話やねん」な読後感になってしまう。本書も西行やトルストイやカントなんかを引き合いに出す章は、正直いって、駄目男の理解力と表現力では感想文を書くのが難儀 …

嵐山光三郎「西行と清盛」を読む

西行の人生を知りたいと思い探してみたが、堅苦しい内容の本が多くて読む気にならなかった。作家にも読者にも「漂泊の歌人」という先入観があって、歌論を軸にしたクソまじめな読み物になってしまうらしい。本書はカタブツ敬遠のオジン、dameo にぴったりで…

まもなく昭和100年・・古雑誌で懐かしむ昭和時代(展)

雑誌<銀花>を知ってる「はてな読者」は0人? 2025年、昭和は100年を迎えます。「降る雪や 明治は遠く なりにけり」と中村草田男の名句で懐旧の念をかみしめたのはついこのあいだだと思っていたのに・・・。 昨年の春、Nさんから電話あり「終活で…

 樋口一葉「にごりえ」を読む  ~新旧版読み比べ~

今回は「にごりえ」を二回(二冊)読みました。昔に読んだ「新字体・旧かなづかい」版と、詩人、伊藤比呂美による現代語訳です。両方読んで、どちらが感銘深いかといえば、断然「新字体・旧かなづかい」版です。当たり前のことですが、現代語訳では明治の香…

杉江 弘 「乗ってはいけない航空会社」を読む

同じ著者による「機長が語るヒューマンエラーの真実」も併読。2冊とも航空機事故に関わる評論で、著者はジャンボジェット機(B-747)の元機長。 幸いなことにここ10年くらい、国内では大きな航空機事故がなく、私たちは電車やバスにのるのと同じくら…

2013年 北と南 ミュージアム巡りの旅 (6)

青森でも2泊・・・・・・青森県立美術館・・三内丸山遺跡見学・・りんご茶屋の津軽民謡ライブ 5月31日 札幌から特急2本(北斗・白鳥)を乗り継いで青森へ。5時間近くもかかります。新幹線の青森~大阪が約6時間だから、いかに遅いか。津軽側では新幹…

遠藤周作「海と毒薬」を読む   

遠藤作品で一冊くらいはシリアスなものを読んでおこうという殊勝な心がけ?で手にした本がこれです。途中でやめようかなと思ったくらい陰々滅々の内容ですが、読み終わって世間を顧みれば、この本以上の残酷物語が現実に起きている。 戦争末期の1945年、…

たまらん巨大樹木に会いにゆく

ウオーキングを兼ねて何十年ぶりかで門真市の「薫蓋樟」(くんがいしょう)を訪ねました。何度見ても圧倒されるド迫力はもう樹木というより巨大オブジェと呼ぶのがふさわしい。幹周り13m、樹高30m、樹齢1000年以上。(大阪府下では最大の樹木で国指定…

川口マーン恵美   「そしてドイツは理想を見失った」を読む

著者は本来ピアニストとしてドイツ暮らしをしていたのに、なぜか政治に興味をもち、というか、ドイツ人の思想や民族性への関心が高く、それも共感ではなく,批判的な見地で語るのが得意のようであります。本書も基本はメルケル政権に対する疑問や批判でスジ…

高樹裕「今のピアノでショパンは弾けない」を読む

素人にとってもピアノに纏わる話は面白い。当ブログ、8月10日に紹介した小説「羊と鋼の森」もそのひとつだけど「調律」という仕事だけであんなロマンチックな話ができた。本書もピアノのメーカーとピアニスト、その中間で仕事するチューナー(調律師)の…

チック・コリア&小曽根真がモーツアルトを弾く

10月3日のNHKクラシック音楽館で再放送された、上記二人のジャズピアニストによるモーツアルト「2台のピアノのための協奏曲K365」は楽しい演奏でした。チック・コリアは惜しくも今年2月に亡くなったので追悼するための再放送になりました。(放送は第一…

川村湊 関西弁の「歎異抄」を読む

理解しにくい「歎異抄」をなんとかやさしく伝えたいと、各界のセンセイ方が解説本を著してきました。一般向けでいちばん大儀な本は高森顕徹監修「歎異抄をひらく」で実に350頁を費やして解説しています。出版社の名前が「1万年堂出版」というのも 面白い…

2013年 北と南  ミュージアム巡りの旅 (5)

札幌散歩のつづき・北海道開拓村・JRタワー(5月30日) 北海道開拓村 道立近代美術館を出て地下鉄で新札幌駅へ行き「北海道開拓村」行きのバスに乗ろうとしたが、タッチの差で間に合わず、やむなくタクシーに乗ります。料金1290円ナリ。ついさっき…

津本陽「巌流島」 ~武蔵と小次郎~を読む

もし、司馬遼太郎が武蔵の生涯を描けばどんな作品になっただろうか、と想像するのも楽しい。空海や義経を取り上げてるのだから武蔵が登場しても不自然ではないが、あまりに先例が多すぎて司馬風武蔵観の入り込む余地がなかったのかな、とも想像する。あるい…

ドッキリ! 草間弥生の紙粘土カボチャが1800万円

9月28日、久しぶりにテレ東の「何でも鑑定団」を視聴。番組後半で草間弥生氏のおなじみ「かぼちゃ」・・といっても、15センチくらいの紙粘土でつくったかぼちゃが出品された。出品者は有名人、假屋崎省吾センセ。この作品は草間氏がニューヨーク生活で人…

岩波 明「発達障害」を読む

●ASD・・・自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群 ●ADHD・・注意欠如多動性障害 本書と共に、権田真吾「僕はアスペルガー症候群」も読みました。医師と患者、双方の著作を読むほうが分かりやすいだろうと想像したからです。結果は予想通りで「発達障害」だ…

高橋輝次(編)「誤植読本」を読む

誤植についての自分のイメージは、年中ドタバタの原稿作りをしている新聞や週刊誌に意外と誤植が無い(少ない)ことで、これは誉めてもいいと思います。なのに、少しは時間的余裕があるはずの一般の出版物に誤植がよく見つかる。特に、文学作品での誤植は、…

嵐山光三郎「不良定年」を読む

著者は若いじぶんから作家稼業専門だと思っていたら間違いで、40歳近くまで平凡社に勤めて雑誌「太陽」などの編集をしていた。だから「不良定年」という書名で本が書ける。脱サラ後になんとか文筆でメシが食えたのは本人の才能もあっただろうが、一番役立…

柏 耕一「交通誘導員 ヨレヨレ日記」を読む

もろもろの事情で定職を失ってしまったとき、とりあえず受け皿になってくれるのが交通誘導員という職業。公的資格とか、経験何年とか、面倒なこと問われないので就職しやすい。70歳すぎても気後れせずに仕事できる。その上、少し文才があればこんな本も出…

川端康成「古都」を読む

よりどり100円均一の陳列台で見つけた古文庫本。ええトシして、今ごろこんな本読んでまんのか、と笑われそうですが、本自体もよれよれに古びていて何やらノスタルジーに浸りながら読みました。 巻末の解説で山本健一氏は本書を評して「・・そして作者は、美…

町田智弥「リアル公務員」を読む

三十代半ばの地方公務員が世間話をするような軽さで公務員の実態を描いた本。知らない世界なので興味深く読みました。自分の考えるところ、公務員には二通りのタイプがあって、志望動機に住民生活の改善やまちづくりに貢献したいという<上昇志向型>と、競…

2013年 <北と南>ミュージアム巡りの旅 (4)

札幌散歩 北海道庁旧本庁舎・三岸好太郎美術館・道立近代美術館 5月30日、雨が上がるのを待って、9時前に出発。札幌駅から徒歩10分くらいで重厚な赤レンガ作りの北海道庁旧庁舎に着きます。アメリカ風のネオバロックふうデザイン、外観、内装すべてが…

まんがで読破 アダム・スミス「国富論」を読む

取っつきにくい名著も漫画化すれば手に取りやすいだろうと企画されたシリーズ作品。この「国富論」なんか一番漫画化しにくいテーマだと察しますが、よくこなしていると思います。この企画、10年続けて、延べ350万冊に達したというから、漫画だと侮って…

中村文則「土の中の子供」を読む

2005年度の芥川賞受賞作品。こんな作家がいたこと知りませんでした。本書の受賞理由はよく分からないけど、ミもフタもない言い方をすると、全編約100ページのうち、20~30ページは暴力シーンであります。それを精一杯文学的に表現した作品、が自分の…

川本三郎「ロードショーが150円だった頃」を読む

副題~思い出のアメリカ映画~ 今頃こんな本の感想文を書いても誰も読んでくれへん可能性100%・・。なんせ1950年代の話ですからねえ。後期高齢者でなければ付き合えない話題です。しかし、懐かしさに誘われて読みました。嗚呼、我が青春の映画満喫時…