まんがで読破 アダム・スミス「国富論」を読む

  取っつきにくい名著も漫画化すれば手に取りやすいだろうと企画されたシリーズ作品。この「国富論」なんか一番漫画化しにくいテーマだと察しますが、よくこなしていると思います。この企画、10年続けて、延べ350万冊に達したというから、漫画だと侮ってはいけません。


スミスがこの本を著したのは約250年前、日本は江戸時代のさなかに資本主義の原形について考察をした。物事を体系的に考えるのが得意な英国人とはいえ、社会構造の分析から将来像まで言及して、それが概ね合っていた。「経済の発展は社会の自然な流れに任せておく方が良く、国家があれこれ規制するのはまちがい」といった見方は現在でも通用する。失敗と修正を繰り返しているうちに自ずからより良き選択をすると。


当時の英国社会は産業革命の勃興期、貴族と農民と少数の商人しかいなかった社会に「製造業」というジャンルが加わり、資本家と労働者が生まれて、発展するとともに対立も起きた。新興産業による格差社会が生まれた時期であります。子供の頃読んだ「オリバー・ツイスト」という小説は、この時代に生きた少年の苦難物語だったと思います。


漫画で描いても「国富論」は難しい。経済論と同じくらいに道徳論の本でもあり、ヘタに説明するとピント外れになりそうなので、巻末のキモといえるところだけ紹介しておきます。

 

産業が発達して資本家が富を築き、労働者もそこそこ潤う社会が成立したとき、国が為すべき政策はなにか。国防・司法・公共事業・教育 を挙げています。国のあるべき姿の基本のキになるこれらは国家が主体になって遂行するべき施策であり、民間に任せてはいけない。基本的に利潤追求を旨とする産業界にはなじまないからです。こんな事、今の私たちには常識ですが、250年前に論じるにはすごい学習と先見性が必要だった。アダム・スミスが経済学の祖と言われる由縁です。


誤植を発見:80頁右下 1942年にコロンブスによって発見された・・・は間違いで、1492年が正しい。(アメリカ大陸のこと)

 

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