●ASD・・・自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群
●ADHD・・注意欠如多動性障害
本書と共に、権田真吾「僕はアスペルガー症候群」も読みました。医師と患者、双方の著作を読むほうが分かりやすいだろうと想像したからです。結果は予想通りで「発達障害」だけ読めばイメージが湧きにくくて困ったかもしれません。それにしても、一般人がきちんと理解するのはかなり困難な障害です。なぜなら、精神科医でもこの双方の障害の内容や相違を正しく理解していない人がいる。さらに、これらの障害はまだ研究途上にあって概念が確立しているわけでもない、と著者は述べています。
そんな難儀な研究途上の障害なので、いきなり専門的解説をしても読者はアクビ連発と想像したのか、著者は「かの、名探偵、シャーロック・ホームズはASDだったかもしれない」・・と難題にソフトランディングを試みます。なるほど。但し、ここで紹介されるホームズはコナン・ドイルの原作とは異なるBBC・TV版です。
著者はまた、世界中に知られる有名人で、かつ、ASD該当者として童話作家のアンデルセンと「不思議の国のアリス」の作家、ルイス・キャロルを挙げています。
「アリス」を読んだ人なら、ああ、そうだったのか、と納得できますね。冒頭からヘンテコな話が展開し、落ち着かないまま突然話がプッツン・・。これがASD作家の文章です。話の流れや展開がスムースでなく、右往左往するのですが、「アリス」に関してはこれが斬新な表現と世間で評価された。何が幸いするかわかりません。
ASDの人たちの一番顕著な特性は「世間との折り合いが難しい」ことです。ほとんどの場合、小中学生の頃からこの特異性があらわれ、本人が意識しつつも変えられない。むろん、個人差が大きいので、まずまず無難に世間を渡る人も多いけど、症状が重い人は就職や結婚などで支障を来すことになります。
他には・・・・
□同じ失敗を繰り返す □忘れ物が多い □ささいなことにこだわる
□人の意見を聞かない □偏食が多い □同時に二つのことをこなせない。
□酒の席が苦手(他人に同調できない) □物の片付け、整理が苦手である。 などの性癖があります。
他人の心情に共感できない、という症状が極端化すると殺人に至る。怨恨や金欲しさではなく、単なる興味で、虫を殺すように人を殺す。こんな恐ろしい話を少年、少女による殺人事件の例で詳しく説明しています。
この解説を読んですぐ頭に浮かんだのは「サイコパス」です。しかし、なぜか、本書では一度もサイコパスの話は出てこない。ASDとサイコパスでは概念が異なるからでせうが、無意味な(動機のない)殺人行為という点では同じです。
中野信子著「サイコパス」を読んだ dameo としては頭が混乱しました。
有り体に言って、本書で解説している少年と少女による恐ろしい殺人はASDよりサイコパスで説明したほうがずっと分かりやすい。当ブログでは7月2日の「読書感想文」で上記「サイコパス」本を紹介しています。
https://kaidou1200.hatenablog.com/entry/2021/07/12/212026
ASDとサイコパスがまぎらわしいと書きましたが、もう一つADHDも知らねばなりません。なのに、このADHDとASDの二つも微妙に重なり合う点があってとてもややこしく、アタマがわやわやとなりそうです。
では、これらの障害を持つ人はどれくらいいるのか。ASDは百人に一人、ADHDは十人に一人(前記のサイコパスは百人に一人)くらいの割合らしい。ADHDのほうがずっと多いということです。身内や知り合いを思い浮かべたら、それらしき人いるかも知れないし、その前に自分を鑑みてみませう。性格や癖、好み、こだわりなどをチェックすると、一つ二つはあてはまるところあると思います。一つくらいあっても、気にする必要はありません。
はじめに書いたように、ASDもADHDもまだ研究途上の障害です。10年後には新しい知見が増えていると思われ、より有効なクスリも開発できてるかもしれません。また、世間での理解がすすむことで当事者のストレスも減少するのではと期待します。(発達障害 2017年 文藝春秋発行・&・H26年採図社発行 )