吉田類「酒場歳時記」を読む

 好きなことをして、それでメシが食える・・のが理想の人生なら、この著者はかなりいいセン行ってます。人生の裏側に「辛酸なめ男」の場面があったとしても、まあ、それは知らないことにして、とりあえずはうらやましいオッチャンであります。自称、画家、イラストレーター、作家、酒場詩人。趣味は登山と俳句づくり。この本は酒飲みの作家の顔で下町の居酒屋をルポしたもの。どこか民放の酒場めぐり番組で訪ねた店を紹介しています。


もっとも、この本を読んで、紹介されてる酒場へ行こうと思う人は少ないはず。どの店の何が旨い式のグルメ本ではなく、描かれてるのは店主や客など人間だからです。これが酒場めぐりならではの面白いところで、スイーツの店めぐりではドラマや詩は生まれない。残念ながら、東京の店がほとんどなので、自分には親近感はないけれど、どの町にも個性的な酒場、オーナーがいて楽しませてくれます。巻末に酒場遍路?と称して八十八の句を紹介しており、駄目男のお気に入りを拾ってみると・・・

 

徳利より 白蝶ほろりと 舞ひ立ちぬ

 酒瓶に 秋の夕日の 沈みけり

ずっしりと 女将のむすび 手に温し

 店主老い 味深まりぬ 温め酒 

 

平易で、しみじみ感も十分味わえる作品です。

(2004年9月 NHK出版発行)


ネットから引用

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