村上春樹「風の歌を聴け」を読む

 はじめて読む村上作品。軽薄感満点のタイトルとおしゃれな装幀、そして、芥川賞狙い?の文体でそこそこリッチな若者の生活が描かれる。最後まで読み通せたのは読みやすい文章とテンポの良さのおかげで、もったいぶった表現や屁理屈が無いのが良い。こんな本がなんで百万冊以上売れたのか不思議だけど、ま、自分の感受性の鈍さのせいにしておきませう。


著者のデビュー作にして芥川賞受賞作と思い込んでいたけど、調べてみると受賞作品ではありませんでした。審査員の多くが推していたのに落ちた。落ちたけど読者には大受けで村上春樹はスター作家になった。審査員に市場を読む時代感覚がなかったということですか。いや、市場に迎合する必要はありません。


主人公は「僕」で、恋人や友人などすべての登場人物も氏名なしというのも珍しい。(友人は鼠というあだ名で登場する)ページが進むまで場所も日本なのか、外国なのかも分からなかった。海が見える山裾の高級住宅街という設定になっていて、これは著者が暮らしたことのある神戸~芦屋界隈の街らしい。


本書で一番楽しい話は「僕」が尊敬するアメリカの作家、デレク・ハートフィールドの登場です。チンケな作品ばかり書いて不遇のまま生涯を終えた彼にあこがれて「僕」はわざわざアメリカまで墓参りに出かける。そして、この小説は彼の作品との出会いがあればこそと「あとがき」で綴る。


ところが、これはまったくのウソっぱち、そんな作家はいなかった。自分を含めて読者のほとんどは実在の作家だと思っていたのではないか。もし、このインチキ話の挿入がなければ、この作品は見かけ通りの軽薄物語で終わっていたと思います。

 

本書が発行されたのは1979年。当時二十歳代だった読者がいまや還暦を迎えている。なので、もう誰も読まなくなった旧作なのかといえば、そうではない。2004年に刊行された文庫版は2015年時点で43刷を重ねたロングセラーになっている。

 芥川賞受賞作家のほとんどが「一発屋」で終了していることを鑑みれば、好き嫌いはともかく、実力、実績、ナンバーワンの作家でありませう。(1979 講談社発行)

 

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閑人帳:モデルナ接種会場はがら空き

 3回目ワクチン接種の案内状が来たので2月10日に出かけました。会場は心斎橋の以前、東急ハンズが入っていたビルです。予約では午前、午後、いつの時間帯でも「満員」はなしでした。会場も少し気の毒なくらい空いていて、待ち時間ゼロ、安息時間15分を含めても30分で終了しました。


この会場はモデルナ専用です。報道ではファイザーのほうが希望者が多く、予約が取りにくいと伝えています。だったら、モデルナを選べばいいではないかと思いますが、なぜか敬遠されてるみたいです。(自分は3回ともモデルナ)
 今はブランドにこだわるより「早く接種する」ことのほうが大事なはずです。家族同居の場合はなおさらでせう。オミクロンに感染して重症化した高齢者の多くが3回目の接種をしていなかったというデータがあるので、家族や世間に負担を掛けないという意味でも早期の接種が大事です。