竹内薫「99,9%は仮説」を読む

 昔、本書がロングセラーになったのは、仮説の説明の最初に「飛行機はなぜ飛ぶか」の問題をもってきたからですね。うまい、と思いました。じっさい、この後のモロモロのテーマはあんまり面白くありません。


さて、飛行機はなぜ飛ぶか。そんなもん、ライト兄弟初飛行のときにもう分かってたんやろ、と思ってたのですが、えらいこっちゃ、なんで飛ぶか、飛べるのか、未だに分からへんのやて。そんなアホな!・・で、皆さん、この本を買ってしまったのであります。


ライト兄弟初飛行から最新鋭ジェット機まで、なぜ飛ぶのか(飛べるのか)が分からないまま、現実に飛行機は飛んでいる。なぜ飛べるのか、の答えはいまだに見つからないけど、現実に飛んでいる。ゆえに、それでええではありませんか。結果良ければ全てよし、文句あっか、ガハハ。ああ恐ろしや、飛行機は「仮説」で空を飛んでいるのであります。


理屈を言えば、翼の断面形状とその上下の空気の流れ方が、飛ぶ、飛べないになるのですが、今のところ、推論でしかない。カクカクシカジカの理論で飛行機は飛ぶ、と明快に説明できないそうです。


 理論はともかく、あの、ほぼ金属でできている飛行機がすいすい空を飛んでることに素朴な疑問と言い難い不安をもつ人は多いのではありませんか。空を飛んでること自体、不条理に思える。最新型の戦闘機なんか、翼はお義理につけてるのでは、と思えるほど小さく、ほとんどエンジンの馬力の強さだけで空に浮いてるのではと勘ぐってしまいます。


タイトルのように、本書は、我々が「事実」と思ってる事の多くは、実は仮説である。仮説を事実と勘違いしながら生活を営んでいる。少しは頭を冷やして「何が事実か」を見極める努力をせよ、とハンセーを促すのであります。地動説が認められるまでは天動説が常識で、地動説という仮説なんか「アホかい」と馬鹿にされた。アインシュタインの相対性原理も、初めは「何しょーもないこと言うとるねん」の扱いだった。


うんと身近な問題でいえば、つい三十年前の「土地神話」は仮説でなく、事実だと信じられた。誰もが土地は値上がりする一方であると信じたからバブル景気になった。しかし、あれは結局、仮説でしたよね。トホホ・・。(光文社新書 2006年2月発行 700円+税)

 

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清水ともみ「命がけの証言」を読む

 もう何十年も続いてる中国政府によるウイグル族への弾圧、民族浄化の実態を描いた漫画。過去に読んだ漫画の中では一番深刻な内容で、しかも、漫画なのに内容の伝達力が文章だけの一般書なみに強い。国際政治にさほど関心がない人でも、本書を読んだ人はみんな中国と習近平に嫌悪感を抱くのではと想像します。この本がたくさん売れることを願いますが、いっぽう、たくさん売れたら、中国当局による著者や出版社へのいやがらせが増える懸念もあります。それを考えると、リスクを冒して出版した著者の正義感と勇気を応援したくなりました。


戦後の民主主義教育を受けたのに、自分はガキの頃から中国が嫌いで尊敬や憧れの気持ちを抱いたことは一度も無い。大人になって「中華思想」のなんたるかを知ると余計に嫌いになった。毛沢東の「文化大89年の89年の「天安門事件」のおぞましさを学ぶと、もう軽蔑の念しかもてない。ウイグル族弾圧も要するに独裁政治家による自国民の弾圧、殺戮である。


でも、そんな国をヨイショする日本人もたくさんいて「持ちつ持たれつ」のよきパートナーというのが現在の常識?です。この先、中国はどうなるのか。dameo の予想では2030年までに「内部崩壊」で大混乱・・四千年来の夢である中華思想の実現(中国が世界を支配、他国はすべて属国となる)はならず、であります。


肝心の本の紹介、どうにも書きにくくてパスします。スミマセンです。
(2021年ワック発行)

 

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