時実新子・玉岡かおる「モノ書く女への道」を読む

 dameo の友人、A子さんが時実新子のお弟子さんだった、という、ささいなご縁で読んだ本。玉岡かおるの作品は「お家さん」を読んだだけです。この育ちや個性のちがいがハッキリしている二人がン十時間?対談して文学論や人生論をぶつけ合った。あるページでのやりとりはほとんど喧嘩腰でヒートアップしているが、ま、作家だから仕方ない。但し、年令は時実サンのほうが27歳も年長で、本書出版の3年後、78歳で亡くなった。


時実さんの功績は何と言っても川柳を「格上げ」したことでせう。いままで俳句より格下の文芸と目されてきた川柳をグレードアップし、かつファンを広げた。現在では愛好者の数では俳句と並ぶのではと思います。


但し、世間で人気の川柳、たとえば「サラリーマン川柳」などと時実さんのつくる川柳とは発想や表現に大きな違いがあり、時実スタイルの作品はわかりにくいというか、文学的というか‥誰でも馴染めるというものではありません。
下記は時実さんの作品例です。


妻をころしてゆらりゆらり訪ね来よ


寒菊の忍耐という汚ならし


姉妹で母をそしりし海が見え


五月闇生みたい人の子を生まず


手鉤無用の柔肌なれば窓閉めよ


包丁で指切るほどに逢いたいか


どないです? dameo なんか、とりあえず、こわ~~~と引いてしまいます。サラリーマン川柳とは別世界の、女の情念、怨念がひたひたと迫る十七字世界です。ふだん親しんでる川柳がいかに生ぬるい世界であるか、その違い、歴然。物事を一分の一で説明されないと理解できない人は玄関払いという感じです。


時実新子の名言・・「(川柳の)十七音字は縮まるためにあるんじゃない、膨らむために一度縮んでいるだけ。ちょっと感性で触れていただければ、パッと一編の小説になりうる力を持っている」これぞ新子流。川柳は爆発だ~~!

(2004年 有楽出版社発行)

 

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