2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

又吉直樹「劇場」を読む

芥川賞受賞作「火花」は芸人の話、本書は演劇人(自称、脚本家、演出家)の話。読み始めると「火花」より読みやすくて文章もこなれている。しかし、半ば過ぎて、友人とメールで悪口兼演劇論を交わすあたりから退屈になる。難解な議論をスマホのメールでやり…

安野光雅追悼「洛中洛外」展 鑑賞

引きこもりの日々のなか、難波・高島屋に出かけて「安野光雅展」を見物。94年の生涯にものすごい数の作品を描き、ほとんどは出版化されているのでこの人の作品を見たことのない人はいないのでは、と思ってしまうくらいであります。しかし、逆に原画を見た…

吉本ばなな「キッチン」を読む

ヒロインみかげは子供の時分に両親を亡くし、代わりに育ててくれた祖父母も亡くなって天涯孤独の身になった。そんな彼女をボーイフレンドの雄一が「うちで暮らしたら」と誘う。訪ねてみると彼は美貌の母親と二人暮らしで、みかげを暖かく迎えてくれた。しか…

村上春樹「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読む

村上春樹の小説には全く興味がなくて長編は一冊も読んだことがない。なのに、この音楽がテーマの対談本をなにげに手にしたらめっぽう面白くて引き込まれてしまった。400頁近い大部の対談記録でテープ起こしは村上氏自身が行った。正確を期するためだろう…

福嶋聡「紙の本は、滅びない」を読む

いくら本が好きとはいえ、京都大学文学部哲学科を卒業していきなりジュンク堂に入社、というのは珍しい。入社後、各地の店を巡って現在はジュンク堂難波店の店長さんを勤めている。そして紙の本への愛着からこの本を著した。ビジネスマンというよりは文化人…

続・柿田睦夫「創価学会の変貌」を読む(2ー2)

創価学会と公明党の関係 この両者を見る目、普通は「公明党の傘下に創価学会がある」と思いがちであるが、近年、これが逆転している。創価学会信者の思い、要望を汲み上げ、それを公党である公明党に伝えて政策に反映させる、というのが本来のあり方だ。その…

柿田睦夫「創価学会の変貌」を読む(2ー1)

前回に紹介した島田裕巳著「民族化する創価学会」より新しい情報を伝える、これは明快に創価学会を批判する本です。願わくば創価学会の信者さんに読んでほしい本でありますが、まあ、それは叶わないでせう。 近づく「Xデー」 学会の現在の大問題は余命わずか…

創価学会を知る2冊の本 <その1>            島田裕己「民族化する創価学会」を読む

創価学会のことを全く知らない人はいないと思いますが、詳しく知ってる人も少ないと思います。実際はどんな宗教団体なのか、2冊の本で紹介します。 中身ぎゅう詰めの本なので、簡潔にまとめるのが大変です。しかし、イメージでしか知らない創価学会の内側を…

太宰治「人間失格」を読む

梅田の書店の店頭に平積みされていたこの文庫本、表紙が黒一色という意表をつくデザインで、昔、読んだことあるな、と思いつつ買ってしまった。装幀家さんの勝ちであります。この新潮文庫版、昭和27年が初版、そして令和2年で207刷りというからすごいロン…

加瀬英明&ヘンリー・ストークス著  「なぜアメリカは対日戦争を仕掛けたのか」を読む

コロナ禍のせいで8月15日の終戦記念日(敗戦記念日というべき)はメディアも国民も忘れてしまったかのようにスルーしてしまいました。実際、今日は敗戦の日だったと意識した人は皆無だと思います。それは仕方ないとして、もう七十数年昔の出来事だった日…

◆恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読む

本の入手には「買う」と「借りる」のほかに「もらう」というありがたい方法があって、本書はMさんからのプレゼント。どて~んと、500頁、二段組のボリュウムにたじろぎましたが、読んでみれば、音楽好きには楽しい本でした。謝々。 直木賞と本屋大賞をダブ…

◆原田伊織「明治維新という過ち」を読む

司馬遼太郎の歴史観をコテンパンに批判 TSさんからまたまた面白い本を送呈してもらいました。幕末史や明治維新に興味有る人は必読であります。何が面白いのか。明治維新に関しては司馬遼太郎の歴史観(いわゆる司馬史観)を真っ向から批判、否定しているから…

渡辺利夫著「放哉と山頭火」を読む

昔、両人の伝記を読んだことがあり、人と作品の概略は知っていたけど、本書の著者は経済学者で、文学は専門では無い立場でどう論ずるのか興味があって購入しました。ただ今は拓殖大学の学長でもあります。 読めば、至ってノーマルな評伝であり、よくこなれた…

朝井まかて「阿蘭陀西鶴」を読む

Tさんから恵送頂いた本、ありがとうございます。朝井まかての本は過去に「すかたん」「花競べ向嶋なずなや繁盛記」「先生のお庭番」も読んでいて、これらも全部タダ読み(借り読み)です。朝井さん、出版社さん、売上げの足引っ張ってスビバセンです。 本書…

天の配剤

五輪大会開催中は毎日酷暑続きで参りましたが、雨の日がなかったぶん、スケジュールは順調に消化でき、8日の閉会式も無難に終了しました。 しかし、翌9日は一転して全国的に雨模様。以後、各地で水害が発生する大雨が続きました。9日から開始されるはずだ…

北大路魯山人「魯山人味道」を読む

本書は文庫本ながら400頁近いボリュウムがあって、全部読むとさすがに食傷します。同じテーマの繰り返しが多いのも煩わしい。 それにしても凄い食通ぶりです。食材を見分ける眼の鋭さ、執拗なまでの研究心、パッとひらめくレシピのアイデア、卓越した審美…

今年の「半畳雑木林」

多いときは半畳の台に10種類くらいの鉢を並べてミニチュア雑木林風情にしていたけど、だんだんずぼらになって今年は4種類のみ。金かけず、手間かけずがウリの貧乏趣味ももう八年たちました。 今年のラインナップは、奥からムクロジ、センダン、シマトネリ…

吉田兼好「徒然草」を読む

これまでに「方丈記」と「枕草子」の感想文を紹介しました。それなら「徒然草」も・・というノリで、何十年ぶりかで目を通すと、まあ、なんと俗っぽいエッセイでありませう。吉田兼好さん、ス、スビバセンね。 選んだ本がまずかった。嵐山光三郎著「徒然草の…

小林よしのり編「日本を貶めた10人の売国政治家」

売国政治家の名前が古めかしいなと思って奥付を見ると、発行が2009年、12年も昔の本でした。野中広務なんて故人の名前も出ています。それは仕方ないとして、売国政治家の汚名を着せられたのは下の面々です。リストにはランキングもついていてワースト…

サイコパスを疑う・・二人の少年殺人犯

7月12日の読書感想文では中野信子著「サイコパス」をとりあげました。日本ではまだなじみのない概念で、本書はサイコパスとは何?という基本を解説しています。大人の10人中、8~9人は知らないかも、という医学用語です。(サイコパス=精神病質者) …

宮下奈都「羊と鋼の森」を読む

ふだんは知らん顔してるベストセラーの本を読みました。2015年、書店員さんが投票で選ぶ「本屋大賞」を受賞した本です。しかし、読んでみれば実に地味な内容で、なんでこれが売れたのか分からない。購読した人の何割が満足してるでせうか。知りたいとこ…

岸見一郎「本をどう読むか」を読む

読書の楽しみ入門編、みたいな題名と内容だけど、著者は哲学者。引用される本もプラトンやソクラテスや三木清や森有正といったお堅い人物、作品ばかりであります。さりとて、内容もカタブツというわけではなく、一所懸命に目線を下げて「読書のよろこびと価…

NHKもテレ朝も韓国目線で実況、解説の不可解

前回は五輪野球の日韓戦での「ブランド隠しテープ」の件を書きましたが、どうやらNHKやテレ朝のアナウンサーは実況・報道で韓国びいきぶりを曝してしまったらしい。韓国目線でしゃべってしまったのだ。それをしっかりキャッチしてる視聴者がいて失態がバレて…

気苦労多々・・ご苦労様

五輪野球の日本対韓国戦で、韓国の選手が履いていたスパイクシューズに赤いテープが貼られていた。MIZUNOのブランドを隠すためである。今でも日本製品不買運動が続いてる韓国では日本製の靴を履いて試合に出るなんて許されない。 なので、こんな姑息な方法で…

遠藤周作「老いてこそ遊べ」を読む

今日も36度の猛暑で家に引きこもり。ブログの読書感想文もマジメな本は敬遠して遠藤周作の面白本を紹介します。 著者は文壇で「そそっかしい男」の見本として有名だったらしい。ご本人もそれを認めて、思い出すさえ血が逆流するようなハズカシイ体験を本書…

国木田独歩「武蔵野」を読む

今ごろ、そんな本を読んでまんのか? と笑われそうだけど、酷暑の日々、たまには、こんなシミジミした心洗われる作品を読むのもいいかと。 「武蔵野」は小説作品だそうですが、読めば、長めの随筆か紀行文という印象になります。明治時代中頃の武蔵野の風景…

はじめて出会ったフランス装本

古本屋の100円均一本ワゴンで有島武郎の「生れ出る悩み」を見つけ、中身を確かめずに買って帰宅、本を開くと・・アリャ、ページが開かない。つまり未断裁本(三方アンカット版ともいうらしい)でした。復刻版であることは表紙を見て分かっていましたが、…

★★マスキングテープではがきをデコる★★

暑中見舞いなど、半ば儀礼的な便りは文字だけでは少し無愛想だし、市販のイラスト入りを使うのも芸がない・・という場合に、マスキングテープの活用をおすすめします。余白に貼るだけだから1分もかからず、かつ、唯一無二のオリジナルデザインです(大げさ…

鴨長明「方丈記」を読む

名文に惹かれる 約30年ぶりに再読。今回は、新井満著「自由訳 方丈記」と佐方郁子「新訳 方丈記」の2冊を読んだ。いずれも原文を併載、また解説文も載せていて、あらためて学習しなおすという気分で読む。800年の時差を楽しめます。 人それぞれの感想…

赤塚不二夫「葉隠」を読む

図書館のマンガコーナーで、何やら趣の変わった表紙が目についたので開けてみるとお馴染みの赤塚マンガ。表紙と中身、ぜんぜん違うので面くらいます。おまけに「葉隠」とは・・参りました。 武士の人生指南書みたいな「葉隠」と赤塚不二夫・・なんの関係ある…