加瀬英明&ヘンリー・ストークス著  「なぜアメリカは対日戦争を仕掛けたのか」を読む

 コロナ禍のせいで8月15日の終戦記念日敗戦記念日というべき)はメディアも国民も忘れてしまったかのようにスルーしてしまいました。実際、今日は敗戦の日だったと意識した人は皆無だと思います。それは仕方ないとして、もう七十数年昔の出来事だった日米戦争のいきさつの一部分を紹介します。


この本は題名自体が説明的で、何を言いたいのか、大方察することができる、という点に惹かれて読みました。とはいえ、内容は複雑怪奇な政治、外交上の争いを描いているのだから、とてもややこしい。


なぜ、日米戦争が起きたのか。大枠は誰でも知ってるような両国の軋轢でありますが、時代をもう少し遡って日本が日清戦争日露戦争に勝利したことが、白人が牛耳る帝国主義思想に大きな打撃を与えた。


地球上、どの地域でも白人が最も優秀な人種であり、有色人種のほとんどは白人の支配下にあった時代に、東洋の端っこの小さな島国がロシア帝国の大艦隊をボコボコにした。これが日露戦争。サッカーでいえば、日本がロシアに5-0で勝ったようなもの。(5-4くらいで辛勝しておけば、日米戦争は起きなかったかも、という考えもある)


アジア、アフリカ、中南米、地球上のあらゆる地点で白人が乗り込んで支配と搾取に失敗した例は一つもないのに、唯一、日本だけは支配できなかった。しかも、200年以上鎖国していた文明未開の黄色人のちっちゃい国にやられた。この辺の事情は、司馬遼太郎坂の上の雲」を読んだ人ならお分かりと思います。立場変わって、駄目男が当時のロシア人だったら憤懣やるかたない、の思いだったはず。日本への蔑視と憎悪の感情、理解できます。決して「敵ながら天晴れじゃ」なんて思いませんからね。


タイトルの「なぜアメリカは対日戦争を仕掛けたのか」は、日本が対米戦争を仕掛けた、という我々の常識に反するものですが、実は、戦争をしたかったのはアメリカだった、というのが本書の主題です。準備を整え、ルーズベルト大統領もやる気も満々だったが、当時のアメリカの世論は孤立主義的風潮で他国には関わらないのをヨシとした。アメリカが日本に攻め込んでも「何の必要あって?」と国民に支持されない。


そこで、アメリカは外交面で「日本いじめ」を強化、追い詰める作戦をとった。「ハルノート」もそのネタの一つだった。そして,何より有利だったのは、アメリカは日本の外交上の暗号通信をほとんど傍受、解読しており、日本の作戦は筒抜けに把握されていた。情報戦では日本は完敗だった。
 ハルノート・・https://nihonsi-jiten.com/hull-note/

 

しかし、日本軍の真珠湾奇襲は成功した・・というのが常識になっている。実は、これもヤラセだった。日本側の攻撃作戦、準備の様子はアチラに筒抜けだから、それを読んで「やられたフリ」をするのが米国の作戦だった。


ルーズベルトの最大の意地悪はハワイの現地司令官に「日本の奇襲」を伝えなかったことだ。来るぞ、と伝えて海と空で迎撃、ドンパチ戦えば米国民の被害者感情が薄まってしまう。これではまずい。一方的にやられたことにしなければならない。日本は何という卑怯な国か、と世論を激昂させることが必要だ。


なので、真珠湾奇襲の一報がワシントンに伝わったとき、官邸のトップは、ムフフ、クククク・・と笑いをかみ殺した?。長官は大統領に「おぬしも、ワルよのう」と囁いたかもしれない。ともあれ、ルーズベルトは日本の奇襲に大満足だった。これで戦争遂行にフリーハンドを得た。


長くなるので、以下省略。戦争が終わって、日本は歴史上はじめて被占領国になった。米国(連合国)に支配された。しかし、この敗戦という最大級の不幸が長くは続かなかったことはご存じの通り。誰が仕掛けたというのではなく、歴史の綾と言うしかない。そして、日本の敗戦を契機に、世界にのさばっていた白人による植民地支配が崩壊をはじめる。インドから東のアジア諸国独立運動が盛んになり、欧州の宗主国は次々と植民地を解放せざるを得なくなった。日本兵の一部が、文字通りの「現場残業」で独立運動に加担した。


日本の惨めな敗戦がアジア諸国の独立を促した。白人による植民地支配に終焉をもたらした。この流れは、時間はかかったがアフリカ大陸にも影響した。結果論であるが事実である。日本は取りあえず滅んだが、白人支配の時代も終わったのである。


しかし、自虐史観にどっぷり浸ってる人は、こういう戦争の裏面、側面を知らない。万年、日本はワル、ダメの国の単細胞思考しかできない。護憲を唱える人は、憲法第九条のコンセプトが「日本への復讐」であることを知ろうとしない。ほんの少し現代史を勉強すれば自虐史観などに染まることはないのに学習しないのは、思想、信条の自由以前の問題です。(2012年8月 祥伝社発行)

 

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