安野光雅追悼「洛中洛外」展 鑑賞

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 引きこもりの日々のなか、難波・高島屋に出かけて「安野光雅展」を見物。94年の生涯にものすごい数の作品を描き、ほとんどは出版化されているのでこの人の作品を見たことのない人はいないのでは、と思ってしまうくらいであります。しかし、逆に原画を見た人は少ないので良い機会になりました。


メインは京都を描いた「洛中洛外」シリーズ。およそ100点のうち、9割は自分が現地を知ってる場所なので、親しみ、懐かしさ、ひとしおです。祇園先斗町から大原の里、嵯峨野、周山街道筋まで、昔、訪ねた土地の風景が独特の柔らかいタッチで描かれている。


安野流描画技術のキモは何なのだろうと考えるに
1/細部を描き過ぎない。
2/色のトーンの豊富さ。
 ではないかと考えました。例えば、祇園祭宵山風景の図では、人の目線で描けば山鉾の背景になるビル街が目障りでリアルに描けないところ、そこは淡いグレーの濃淡のベタ面だけで表現している。何もないのではなく、単なる省略でもなく、本当はビルがあるよね、をソフトなグレーの面塗りだけで表現する。


もう一つ気づいたのは、のどかな山里の風景を描くに、晴天であってもバックが「青空に白い雲」が浮かんでるというスタンダードな表現を意図的に避けてるのでは、ということです。むろん、全ての画面でそうしてるわけではありませんが、真っ青な空の画面はほとんどない。リアルに描けば通俗、凡庸、ヘタすると「童画」になりかねないことを察しての「敬遠」なのかもと想像しました。


偶然だけど、ただいま著者の「絵のある自伝」を読んでる最中です。1926年生まれなので、戦前、戦中の経験談がたくさん出てきます。ただいまは学徒動員で北九州の炭鉱で石炭採掘の仕事をした様子を描いてる場面。読み終わったら感想文を書きます。


ほかに「京都御苑の花」も20点くらいあります。同展は9月6日まで。難波高島屋7階グランドホールにて。10時~18時30分。入場料1000円。

 

錦小路商店街

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