図書館の青少年向け書架で見つけた本。「14歳の世渡り術」というサブタイトルがついていて、大人社会の難儀な問題を分かりやすく解説するシリーズ本であります。著者は40代?の女性作家で、はじめ右翼、次いで左翼の思想に共感し、街宣など運動にも携わった。男なら「アホちゃうか」と蔑まれるところ、女性だと「ま、ええか」となるのでせうか。しかし、思い詰めたら行動に移すところは、何も考えずにボケーと生きてる人よりはベターであります。
なにしろ青少年向けの本ですから、極論や過激な表現は慎み、ソフトに分かりやすく書いていて、大人が読んでも十分勉強になります。右と左、それぞれの思想を解説しつつ、全ての考え方において左右が対立しているわけではなく、共通の問題意識もあると述べています。
左右共通の認識と言えるのは「反資本主義(反資本家)」と「反グローバリズム」の二つ。もっとも、右翼側はだからといって社会主義が良いなんて、絶体言わないのですが。要は、資本家による搾取、格差社会化など、庶民、若者が生きにくい世の中をなんとかしたい、人間らしく生きたいという点では左右とも似たような見識のもとで活動していると。
では、左右の明快な対立点は何か。大人ならみんな知っていることですが、憲法問題、天皇制、教育問題、などで、これらで容易に歩み寄ることは無さそう。しかし、著者に思想的な影響を与えた知人は、左右関係なく、人間として十分魅力的なオジサンばかりだったという。
右の人はやかましいだけの街宣右翼を嫌い、左の人は革マルなど暴力が本命の左翼を軽蔑する、いわば教養人だからでせう。そして、左右の活動家及び著者自身が一番危惧するのは国民の「無関心」です。だから、君が14歳であっても、政治だけでなく,身の回りに起きることに関心をもち、疑問が起きれば積極的に関わることをすすめています。
戦後最初の小学一年生になった dameo の経験からいえば、当時の親の考え、学校教育が共に「戦前の全否定」になってしまったのは仕方ないと思ってます。あらがうことは出来なかった。問題はそのあとの考え方です。「戦前の全否定」を検証しようともせず、そのまま引きずってるのが左翼でせう。「自虐史観」なんかはその副産物です。もっとも、自分だって昔は土井たか子のファンだったから、えらそーなことは言えません。
世渡りをする中で、ちょっと待てよ、と「戦前の全否定」に疑問をもった人と持たなかった人、ここんところが分かれ目です。全否定という国民総洗脳状態から脱却できたか、できなかったか、です。自分の場合は長い年月かけてジワジワと脱全否定、脱自虐史観に至った。これができたのはやはり読書のお陰だと思ってます。(河出書房新社 2007年5月発行)