読書感想文

伊藤ミナ子「銀座料亭の若女将が教える、一流の習慣術」

 銀座で、お客は一日三組に限定の店・・というから、一見さんお断りの超高級料亭かと思ったら「ぐるなび」でも宣伝していて、メニューは一万円からとある。だったら、予約すれば誰でも行ける店なんでせう。


一流たる人の習慣術というのが本書のテーマですが、ここでは「会話テク」なる項目だけ紹介します。著者が接客した経験から感じた、接待の席での上手な会話についてのアドバイスです。


◆話はコンパクトに、結論から話す
 お互い、忙しい身であれば、まず伝えるべき結論を述べ、次に、経過や補足的なことを話すのがベスト。しかし、話がヘタな人は前提からくどくど喋って、なかなか結論にたどり着かない。相手はイライラして「要するに何を言いたいの?」と突っ込んでしまう。しかし、ご本人は丁寧に説明してるつもりなので、これはもう性分で改まらない。こんな話に限って、中身はどうでもいいような軽いものだ。


◆ストーリー仕立てで話す
 思わず引き込まれてしまうような魅力ある話は、後で考えたらストーリーになっていることが多い。事実を断片的に並べても感興が起きない。「無愛想な話ぶり」というのは起承転結がつながらず、何を言いたいのか伝わらない場合がある。もっとも、立て板に水、の能弁でも中身が貧しければアウト。しゃべり過ぎは当然、嫌われる。


◆まずは相手の言うことを聞いてみる
 自分の考えが正しいと自信をもってる人は、とかく相手の言うことを聞かず、持論を一方的に喋りたがる。ゆえに、しらけたり、鬱陶しがられたりして、円滑な会話ができない。拝聴するだけの席ではなく、議論の場では、まず相手の話を良く聞いて、そのあとで逐一反論や疑問の呈示で話が噛み合うようにしたい。口数の多い人は「聴く力」を持たず、見下げられることがあるからご用心。


◆悪口は言っても陰口は言わない
 対談相手に言うのが悪口、相手のいないところで言うのが陰口。例えば、部下に悪口(叱責)を言うときは、ストレートな言い方でもよいが、相手にちょっと「逃げ」の余裕も与える。また、叱りながら自虐的なオチも使って「俺もアホやってんけど」と、とことん相手を追い詰めないことが肝要。こんなことは経験を積まないとなかなか身につかない。


 陰口は言わぬが花。ちょっとした陰口が他人を介在して大問題になることがある。しかし、相手を窮地に陥れるために、意図的に陰口をながすこともある。「怪文書」なるものも陰口の一つである。
 逆に「陰褒め」はプラス効果が大きい。頭の良い人は、本人に直接褒め言葉を言わず、人づてに褒め言葉を流す。褒められた人は。このほうが評価感が高まる。


◆人脈自慢は二流、三流人間の証拠
 下流の人間ほど人脈自慢をしたがる。尋ねてもいないのに有名人とのつながりを言いふらすは成金族。一流の人は人脈を容易に明かさない。むろん、完全にクローズする必要も無いが、肝心な場面でチラと明かすことで信用が高まる。


◆語彙を増やす
 一流人は、ほぼすべてが読書家だから、会話での語彙が豊富だ。逆に、読書習慣のない人は語彙が貧しい。どうすれば語彙を増やせるのか。
「四字熟語」辞典なんか買って暗記する? でも、折角覚えても、使う場面がなければ何の役にもたたない。アウトプットできる環境があってこそ役に立つ。さりとて、毎日十時間、テレビやスマホと付き合っても決して語彙は増えない。


 熟年世代になると、日常会話にも資質があらわれる。初対面の人でも半時間会話すれば人格、教養が知れる。だからといって、60歳過ぎて「会話テク」を勉強しようという人なんかいない。苦労して会話術を学ばなくても、付き合う人間を選ぶ(レベルを下げる)だけで悩みはなくなるのであります。(2011年8月 ソフトバンク クリエイティブ発行)

 

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