斎藤美奈子「学校が教えない ほんとうの政治の話」

 自分の体験で言えば、今まで友人、知人と政治に関して議論した記憶がほとんどない。たぶん、日本人の多くが政治的議論を好まないのではないか、と思っています。なぜなのか?。著者は明快に答える。「贔屓がないからです」
 なるほど、そういうことですか。虎キチが集まれば自然に話が盛り上がる。巨人ファンに対してもガンガン言いたいことを言う。ところが、そんな贔屓がないと話題に事欠き、議論などできない。選挙の結果は贔屓の結果でもありますが、実情はみんな黙って投票するだけで終了です。


諸君、もうちょっと政治に興味を持とうではありませんか、と呼びかけ、政治のイロハのイから啓蒙しようと著したのが本書であります。とても分かりやすい書き方なので、新しく選挙権を得た若者が読めば役に立つと思うのですが、ま、こんな本、買わないでせうね。そうして中年になり、オジンに至っても政治オンチのままあの世へ行くのであります・・って、自分のことか。


何が分かりやすいのか。本書では国内政治のすべての論点を二つの対抗軸の設定で解説する。即ち、体制派と反体制派、資本家と労働者、右翼と左翼、国家と個人、保守とリベラル、と二分してあなたはどちらを支持するかを問う。
 なるほど、これなら分かりやすい。もちろん、自分は右翼か左翼かなんて考えたことがない人や、年収400万のサラリーマンだけど親父から10億円の遺産を受けた自分は資本家なのか労働者なのか、ワカランと迷う人もいるでせう。


それでも、このような論点の整理は役にたちます。現在の自分の立ち位置だけでなく、過去の自分を思い起こして比べることもできる。dameo も若い時分は左翼支持、反体制派の人間で、土井たか子のファンやったなあと懐かしく思い出すのであります。(しかし、共産党は嫌いだった。死ぬまで嫌い)
 ところで、著者、斎藤センセの立ち位置はどうなのか、これが気になりますが、本書の中程で「自分は反体制、リベラル支持」と述べている。だから内容も左よりに偏向しているのかといえば、そんなことはなく、100点をあげたいくらい平等の扱いをしている。内容はむろん、恐らく文字数まで等しくしたのではと思われます。


書名が「学校では教えない・・政治の話」となっているけど、国家と個人、資本家と労働者などのテーマは、ほんのさわりくらいは教えてるはずです。しかし、選挙の投票率が概ね50%前後しかないのは国民の半分は政治や行政に無関心であることをあらわしている。生まれ変われるのなら、日本人以外の国民になりたいと思ってる人たちでせう。(2016年 筑摩書房発行)