柳美里「貧乏の神様」

 副題<芥川賞作家 困窮生活記>とあるように、世間でそこそこ名を知られた作家の暮らしが実はとても厳しいことをセキララに描いた、もう半分ヤケクソ気分で綴った本。去年の年収ン百万円という数字は出てこないけど、本日の所持金2000円ナリ、てな場面はしょっちゅう出てくる。さりとて作家以外の稼業は思いつかず、ただただ文章を書くしかない。


dameo が無責任に想像するところ、過去20年くらいの芥川賞受賞者の作家稼業の平均年収は300くらいではないか。一部の売れっ子、綿矢りさ金原ひとみ川上未映子、などでも1000万未満?と想像する。芥川賞受賞作以外はかいもく売れない作家が大半で、かつ、講演会とか、対談など、メディアに登場する機会がなければ年収200万未満とかもあり得ます。


本書によれば、雑誌などの対談の相場は3万円だという。小説やエッセイなどは著者の場合、1枚400字の場合、4000円くらいらしい。100枚なら40万円。売れたら印税収入があるけど、初版3000部キリ、てのも普通にある。今どきの作家は原稿用紙なんか使わないけれど、原稿料の計算は400字詰め原稿一枚なんぼ、という計算が常識だそう。


ここまで書いて委員会? と驚いたのは、原稿料の未払いが続く出版社に対して「これだけ未払い原稿があります」と詳細な表をつくって公開していること。
(下の画像参照)著者は「創」という雑誌に連載記事をもち、永年、寄稿してきたが原稿料が支払われず、督促してものらりくらりと要領を得ず、とうとうこんな形で公開した。雑誌名は「創(つくる)」で担当者は篠田編集長だという。作家が出版社をこんなかたちで訴えたのははじめてではないか。
 かくもええかげんな雑誌、とっくに廃刊だろうと思って調べたら存続していました。篠田氏が社長兼編集長兼営業部長兼・・要するに一人で仕切ってる会社だからデタラメ出版でも生き残れるらしい。


結局、未払い期間は7年に及んでようやく著者に不利な形で支払われた。著者の計算では総額1300万円に上ったが、実際の受取額は大巾に減ったようだ。
それにしても書籍出版でこんなタチの悪い会社があるとは。(2015年 双葉社発行)

 

これだけの原稿料が未払いですと著者が訴えた「被害リスト」