亀田潤一郎「稼ぐ人はなぜ長財布を使うのか」を読む

 22頁「もちろんピッタリというわけにはいきませんが、これまで多くの社長の財布を見てきて、概ねその人の年収というのは、今使ってる財布の購入価格の200倍に匹敵する、という事実に気づいたのです」


20万円の財布を使ってる人なら、その人の年収は4000万円
5万円の財布を使ってる人なら、その人の年収は1000万円
3万円の財布を使ってる人なら、その人の年収は600万円 (引用ここまで)


くそ~~~、むかつくやおまへんか。駄目男の財布はスーパーのバーゲン台にてんこ盛りしてあった二つ折型を2500円で買ったので、200倍したら50万円。人生マックラであります。それは仕方ないとして、著者が言いたいのは、お金を大切にし、扱う人は、お札も大事に扱う。財布というのは、お札にとってはホテルのようなもので、なるべく居心地の良い財布で丁重に扱うべきという。これは分かりますね。ちなみに、著者、亀田氏(税理士)が使ってるのは20万円のルイ・ヴィトンだそうです。


こんな景気のいい話を書く著者も、若い頃に父の経営する会社が倒産し、借金の返済に追われて家族がバラバラになり、昼は塾の講師、夜はコンビニのアルバイトで一日中働き通し、少しでも生活費を切り詰めるためにコンビニ店主の許可を得て、毎日賞味期限切れの弁当を持ち帰って食べた。これがたたって病気になった・・云々と、どん底生活を味わっています。


誤解の無いように書き加えれば、金持ちは収入に応じた高価な財布を持つべきだという話ではない。逆に、少し無理してでも、高級な財布を持つことでお金に対する意識を変えよ、というのが本書のコンセプトです。
 長財布にはお札だけ入れ、カードや、名刺やレシートなどは入れない。財布は大事なお金(お札)のホテルであり、なんでもかんでも突っ込む物入れでは無いということを自覚する。銀行でおろしたお金を入れるときは「いらっしゃいませ」出て行くときは気持ち良く「ごきげんよう」と送り出す。こんな気持ちでお金を大事に扱うと浪費もしなくなると。


自分は貧乏だからと万年オンボロ財布を使ってると、ボロ財布に見合った貧乏暮らしから脱することができない。それより、今は貧しいけれど、清水の舞台から飛び降りる気で不相応な高級財布を買い、お金に対する意識の変革をめざす。上昇志向をカタチで表現する小道具として財布はスグレモノだというわけです。上等の財布にお札を入れて大事に使うクセがつくと、他のモノから趣味、ライフスタイルもその感覚が通じ、ひいては人間関係にも影響します。なるほど、ルイ・ヴィトンの財布に一万円札詰めてパチンコ屋に行く人はいないでせう。


著者はガツガツ稼いでケチケチ使え、と言ってるのではありません。ふだんは倹約家でよいが、使うべき時にはパッと使う。すると意外な好転や好循環が生まれてお金が回り出す。ケチと贅沢を上手に使い分けようという考えです。
 なお、この「財布の話」は男性限定、女性にはあてはまらないと著者はことわっています。女性は財布を人生、経済哲学の小道具にするとか考えず、装飾品の一つとして持つからです。(2012年12月 サンマーク出版発行)