村上春樹「不思議な図書館」

 村上春樹が童話も書いてるなんて知りませんでした。創作の間口が広いってトクであります。購読者のほとんどは書名ではなく、著者名が村上春樹だから買うにちがいないからです。ハガキサイズの小型本で100頁、イラストがあるので本文は90頁以下の短文です。なのに、ハードカバーの箱入り本。村上センセでなければこんなゼータクな作りは許されないでせう。


小学校6年生くらい?と覚しき少年が近所の図書館へ本を返しに行く。返却して、次に「本を探したいのですが」というと、係のおねえさんは「階段を下りて107号室へ」という。地下室には薄汚い老人がいた。少年は「オスマントルコ帝国の税金の集め方」を知りたいのですと言った。
 通い慣れた図書館の地下は迷宮になっていた・・じゃじゃ~~ん!。と話が展開していくのであります。この発想、なんか「不思議の国のアリス」に似てるじゃん、と思うのですが、アリスほどの大冒険はナシで、少年は無事に帰宅できた、というお話です。先日、柳美里の貧乏生活記を紹介したけど、作家人生のピンとキリを知る思いでありました。(2005年 講談社発行)