宝島編集部「日本の新宗教50」を読む

 元統一教会が安倍首相暗殺事件に関わったことで目下は非難囂々の有様で、世間では新興宗教団体への眼が厳しくなっている。では、実際にはどれくらいの新興宗教が存在、活動しているのだろうか・・という関心に応えてくれる本であります。対象は、仏教や神道キリスト教を除く、江戸時代末期より後に創立された宗教です。信仰の自由は憲法で保障されていること周知の通りですが、本書を読めば新宗教のほとんどはトラブルメーカーでもあるということが分かります。神仏への帰依を放り出して、金や人事で争いの絶えないのが実情。とはいえ、キリスト教イスラム教、それに仏教も創始以来ゴタゴタ続きであること同じだから,エラソーなことは言えない。


15ページに「新宗教国内信者数ランキング」という表があって、上位30の団体が掲載されている。トップは言わずもがな「創価学会」で827万世帯、2位が「幸福の科学」で1,100万人・・。ホンマか?と疑うのが正しい。デタラメと言ってよい数字です。創価学会は世帯数が827万ですが、先の国政選挙では比例票が600万しか取れなかった。幸福の科学は今回も多数の候補者を立てたのに一人も当選しなかった。1,100万人どころか、100万人もいないのではないか。そのほかの各宗教団体のほとんどが信者数を水増ししている。その証拠に上位10団体までの信者数を合計すると3000万人を越え、日本人の3人に一人が新宗教の信者ということになる。そんなアホな・・。

 

本書15頁の<新宗教国内信者数ランキング>の一部

 


今、問題になっている「元統一教会」は信者数ランク15位。信者数56万人となっているが、これもインチキでせう。信者数が少ないから一人当たりから何百万、何千万の金を巻き上げなければならない。もはや宗教団体ではなく、詐欺や恐喝で集金する悪質な宗教法人であります。
 本書が意図的に新宗教の悪口や批判ばかり書いているのでなければ、常識で判断して7~8割の団体は信仰より金集めが目的で運営していると言われても仕方ない。おまけに、ほぼ全ての団体において信者数の減少が進んでおり、運営資金が潤沢なところは皆無といってもよい。


本書によれば、有名団体で遠くない時期に崩壊が危惧されるのはPL教団。衰退著しいのが霊友会立正佼成会、と書いてある。信者数が数万から数十万の団体は民間における中小企業のように生き残りに必死という状況にある。


トップの創価学会は信者数のジリ貧も問題だけど、盟主、池田大作の去就が最大の悩み。どんなポジションを与えたらよいのか、彼は三代目だから教祖と言えないし、未だに宙ぶらりんのままであります。ふだんの呼称にさえ苦労して目下は「池田先生」で通しているけど、芸がないなあと同情したくなる。そのカリスマ「池田先生」の跡を継ぐ人はどう考えても「フツーの人」しかいない。このひどいギャップをどうして埋めるのか。次世代で内紛が起きること必定でありませう。(池田大作を象徴化して現状維持を図るかも)


各教団の実情を読み終えての感想をいえば、本書に記された団体のなかで一番穏やかで安定感を感じたのは天理教くらいでせうか。教えが過激ではない。内輪もめが少なそう(実情不詳)。強引な勧誘をしない。という印象があります。他に共感や魅力を感じた団体はゼロです。あってはならない宗教団体の政治への関与に関しては、元統一教会だけでなく、創価学会に対しても同じくらい不快感をもっています。(2017年 宝島社発行)