近藤大介「ファーウエイと米中5G戦争」を読む

 本書は中国の時事問題に詳しいジャーナリストが5G問題の最新・・といっても、2019年春頃までの情報を簡潔にまとめたものですが、それでも十分にややこしい。通読して内容を簡潔に説明せよ、と言われたら・・・説明できませんです。フガフガ。


本書には肝心の5Gとは何か、の説明がありません。4Gとの違いについての解説もない。そんなイロハのこと説明してたら、それだけで100ページ要るでせう。そもそも、日本人の2割くらいは「ファーウエイと米中5G戦争」という書名を見て「なんのこっちゃねん?」ではないか。・・と言って、理解できない言い訳をする。


うまくまとめることができないので、断片的感想を書きます。
 米国がファーウエイを世界の市場から排除するのは難しい。もう手遅れだという感じです。オバマ政権時代が無防備状態だったことでファーウエイの急成長を許してしまった。すでに世界中に販売網をつくって実績をつくっており、かつ、安くて品質が良いと評価されているから、排除や割り込みはきわめて難しい。その上、ファーウエイはすでに次世代の「6G」の開発を進めている。


5G基地局建設というインフラ整備においては他国(他社)がこれを上回るテクノロジーでファーウエイを排除することはもうムリだ。唯一、独走を止める方法は基幹になる半導体の設計、製造面で他国が有利になることしかない。で、その鍵を握るのが台湾のTSMCなどのメーカー。この会社がいかほどファーウエイになびくか、なびかないか、で勢力図が変わる。台湾が鍵を握っている。


中国が台湾を武力で奪取すれば、ファーウエイ問題は「中国の勝ち」で終わる。但し、ファーウエイ自身がそれを望んでるかといえば、たぶん、それはない。中国政府のバックアップで大成長したファーウエイだが、任正非社長の会社経営は資本主義思想によっており、共産主義がなじまない会社である。


これはdameo の個人的予想ですが、中国政府とファーウエイがいつまで一心同体の関係を保てるか疑問です。もしや任正非社長はすでに中国政府を鬱陶しく思ってるかもしれない。社長の性格や趣味嗜好から察すればガツガツ稼ぐだけが目的ではないタイプであり、かなりのロマンティストという印象もある。


それが疎まれて、近未来、政府首脳と葛藤が起き、あの「アリババ」のジャック・マー氏のように「疎外」される可能性がある。ただ、アリババと違うのは、世界中から集めた優秀な社員がそんな処遇を認めるとは思えない。世界中に散らばったン万人の社員はほぼ全部「資本主義」社会で仕事をしている。習近平の思惑で彼らをコントロールできるなんて、あり得ないと思う。(2019年 講談社発行)

 

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