◆お知らせ・・・今まで二日おきくらいで記事を投稿していましたが、近日、視力が衰えて読書スピードがいっそう遅くなってしまいました。もう長編は読みたくない(読めない)がホンネです。今月からは月に10本以内に減らして細々続けたいと思います。引き続き、ご愛読下されば幸いです。
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山本 尚「日本人は論理的でなくていい」を読む
いまから半世紀も昔、1970年ごろに「日本人とユダヤ人」という本が大ヒットして自分も読んだ覚えがある。著者のイザヤ・ベンダサンの正体についての詮索も話題になったがハッキリしなかった。このミステリーは結局、作家の山本七平であろうということになった。この本のヒットがきっかけになって多数の日本人論書籍が発行され、日本人は欧米人や中国人とはかなり国民性が異なることを学んだ。本書もこれらに準じた日本人論のひとつ。新ネタはないけれど、おさらいという点で役にたちます。
国民性に関するごく最近の話題は「コロナ禍」における日本の対処でせう。著者は、日本人はコロナ禍にもフィーリングで向き合い、欧米や中国の論理的対応とははっきり異なる対処を貫き、結果、大きな災厄を防いだのはよかった。欧米のロックダウンという強硬な施策には政府も国民も知らん顔した。ヨソはヨソ、ウチはウチ、で通したのであります。細部でゴタゴタはあったにせよ、トータルで被害を小さく抑えたという点では○でありました。ゼロコロナにこだわって経済成長の足を引っ張ってしまった中国政府のアホさとは天地の違いがあります。
確かに,日本人は論理的に物事を考えるのが苦手だ、と著者はいう。世界中の百数十を数える民族のなかで日本人の気質と同じような民族はいない。日本文化の大先輩である中国人も気質は水と油くらい違う。そして、大先輩だからといって中国の文化をそっくりマネしなかった日本と、そっくりマネした朝鮮との差の大きいこというまでもない。
意外なことにノーベル科学賞の受賞者は国を問わず、論理型より感覚(フィーリング)型の人間が多い。発想の原点から論理の追求に励むのではなく、ぼんやりしたイメージからスタートすることが大発見や発明につながる。数学のような論理のカタマリみたいな学問でも最初はぼよ~~んとしたアイデアがネタになる。ま、凡人には想像外の世界でありますが。
自らもノーベル賞を目指して研究
さて、著者の山本 尚氏は自ら化学研究者であり、まもなく80歳を迎える高齢ながら、永年研究してきた「デザイン型ルイス酸触媒」で成果を出すべく奮闘中であります。広義では「医薬品のペプチド化」というテーマで、実現すればクスリの製造に大革命をもたらすそうであります。 で、どんな研究なん?とぐぐってみたのでありますが・・イヤハヤちんぷんかんぷんの世界であります。興味ある人は読んでみて下さい。(以下コピー)
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山本尚博士の研究の概要 「精密ルイス酸触媒の開発と応用」
有機化学者の重大な使命は分子の構造を眺め,合成するプランを立て,容易に手にはいる物質を細工し,組立て,目的物を人工的に作り出すことにある。すなわち,制御された物質を設計図にしたがって原子分子から人工的に組立てることこそ有機化学の真の役割である。山本尚博士の研究の特色は,新規な有機金属化合物の特性を巧みに利用して,こうした有機物質の精密なビルトアップを可能にした点である。とくに,世界に先駆けて精密なルイス酸反応剤の開発を精力的にすすめ,有機物質の化学合成に未知の新分野を創成し,国際的に先導的な役割を果たしている。
発想は極めて単純である。炭素と炭素の結合を作り上げる有機反応の大半はルイス酸触媒によって進行する。このルイス酸触媒は古く有機化学が始まった19世紀から使われてきたが,塩化アルミニウムやフッ化ホウ素を百年一日のように使ってきた。山本博土はこの触媒の構造に少し変化をもたせ,設計した嵩高い配位子をつけることによって,金属触媒同士の会合を抑え,その結果反応性を向上させると同時に,配位子は固有の反応場を提供し,それぞれの反応に完璧な選択性を与え得ることを示した。また,従来のルイス酸触媒では考えられなかった新しい反応形式すら可能となることも示している。アルミニウム,ホウ素,チタン等のルイス酸触媒にこの考え方を適用し,非常に多くの新反応を開発し,従来とはまったく違うパターンの新しい反応性や位置と立体選択性を得ている。そして,今やこうした発想はごく当然のこととされ,修飾型のルイス酸触媒は世界各地で日常的に用いられているが,そのほとんどは山本博士のデザイン型ルイス酸触媒に発想の源流を見いだすことができることを強調しておきたい。
https://dbnst.nii.ac.jp/pro/detail/3848?page=1