南野苑生「マンション管理員 オロオロ日記」を読む

 一年くらい前に「交通誘導員 ヨレヨレ日記」を読んで、単純な仕事に見える交通誘導員もいろいろ気苦労があること知りました。本書はマンションの住み込み管理人、72歳、南野さん夫妻の苦労物語であります。 ちなみに、南野さんの収入は夫婦で手取り約21万円。東京ならもう少し多いかもしれない。(南野さんの勤務は京都市大阪府内のマンションだった)


南野さんは京都で個人経営の広告代理店を営んでいたが、不況や阪神大震災の影響で仕事が激減し、行き詰まってしまった。悩んだあげくに選んだのがマンションの住み込み管理人、素人でも就職でき、何より家賃不要というのが助かる。のべ13年間に数カ所のマンション管理人を務めた苦労話が実感より明るく?綴られている。陰険レポートでは売れませんからね。


言うまでもなく、管理人の苦労の最たるものは住民(管理組合)と雇用主である管理会社の板挟み状態になること。恐らく全国共通でせう。この場面で管理人の資質が問われるといってもよい。短気で自己主張の強い人は失格です。


いろいろ苦労はしても、このような本を出版できたことは南野さんが管理人という仕事を「良い人生経験になった」と肯定できるからで、最後の勤務では住民と信頼関係を築くことができたことに感謝の言葉をのべている。読むほうも心が温まるハッピーエンドでした。  (2020年 三五館シンシャ発行)


今は昔、dameo 理事長オロオロ日記
 自分は管理人の経験はないけど、昔に管理組合理事長の経験はあって、まあ十分「苦難物語」でした。60戸の小規模マンションだから管理人ナシの自主運営です。何が苦労だったのか。居住者にヤクザが2所帯いたことと、暴力を振るう精神障害者が1名いたこと。ヤクザの所帯Aが管理費を滞納してン十万円になり、丸腰の自分がヤクザから金を取り立てる、という場面になった。トホホ。結果を言うと全額は回収できなかった。(突然、引っ越してしまった)


精神障害者はある日、マンション内でハデな物損事件を起こした。事情を訊くために家を訪問すると「息子が犯人なら物的証拠を示せ、できなければ、あんたを人権侵害で訴える」と、謝罪どころか逆ギレして脅かす始末。本人の父親は一流企業の管理職だったが、なんと不幸な家族なのかと寒気がした。


こんな難儀は住民全部が知っているので、みんなビビッてしまい、次の理事長を引き受ける人がいない。理事会を開こうにも言い訳つくって集まらない。さりとて放置すれば管理組合がホーカイしてしまう。ここで自分が逃げたら、それはそれで悪者にされかねない。結局、ルール破りで二年間、理事長を務めた。


新発足の会合では理事のみなさんに次のように言った。「なり手がいないので、自分が続けて理事長をやります。その代わり、今年度の建物修理等の計画については私に任せてほしい。(理事会の承認なしでやるということ)文句を言う人があれば、その人に理事長を交代してもらいます」・・一同、シ~~ン。 なんのことはない、自分が理事さんたちを脅迫していたのであります。


・・といった難儀がありましたが、トータルでは概ね仲が良くて、なんのかんのと言ってはホームパーティを催し、朝方まで飲んだ楽しい思い出があります。マンション暮らしの幸不幸は、ひとえに入居家族個々の人的クオリティで決まります。

 

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