小池真理子 短編集「妻の女友達」を読む

 著者の作品を読むのはたぶんはじめて。数冊の短編セレクションの中からミステリー編を選んで読みました。50ページくらいのほどよいボリュウムの作品が4編。感想をいえば表題の「妻の女友達」と「鍵老人」が面白かった。


巻末のあとがき<物語の快楽>なる見出しの文を読んで驚いた。「私は長い間、ミステリー小説全般に対してきわめて傲慢としか言いようのない偏見を抱いていた」・・え?、何を言うのですか小池センセ。<あとがき>でどんでん返しでっか?。けったいな作家やなあ。


「ミステリーとは即ち・・事件発生、捜査開始、警官や刑事どうしの人情ドラマふう人間関係、そして最後に、なんだ、そうだったのか、という、さほど驚きもしない凡庸などんでん返しがあり、急転直下、事件解決、めでたしめでたし、で終わる、無邪気な物語形式の総称に過ぎないと思っていた」


要するに、今までミステリー作品をバカにしていたと白状しているのであります。以後もミステリーの悪口が2ページくらい綴られるのですが、「あるとき、友達に勧められてカトリーヌ・アルレーの作品を読んだ」これが転向、ハンセーのきっかけになって、舶来もののミステリーを読むようになった。以下、5ページにわたって「言い訳」文が続くのであります。


この道何十年の有名作家でも、月並みな偏見にとらわれるものかと。実をいえば、dameo のミステリー作品敬遠の心情も似たようなものです。特に、鳴り物入りで宣伝される流行作家の作品なんか、ハナから無視しています。しかし、自分の場合は「偏見」ではなく、単純に「好み」の問題という認識ですけど。(食わず嫌いかも)


小池センセは長い作家稼業において、はじめてミステリーを書いた。アイデアにはかなり苦労されたのではと察します。4作品とも主人公は犯罪に縁のなさそな凡庸な市民ばかりで、それが、ほんのささいなきっかけで人殺しに至る。もしや、これらの作品は単発のTVドラマに向いてるのではと思いました。筋書きも面白いし、ローコストでつくれるドラマです。すでに実現済みかもしれません。(1997年 河出書房新社発行)

 

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