山野博史「人恋しくて本好きに」を読む

 著者は関西大学法学部教授。専攻は日本政治史、書誌学。この本は、題名から分かるように書誌学のほう、本を通じての文壇よもやま話でありますが、半分近くは司馬遼太郎に関してのよもやま話になっています。


世に司馬遼太郎ファンは多いけれど、山野センセイの情熱、ツッコミぶりは尋常でなく、なんせ小学生時分、つまり司馬遼太郎がデビューして間もなくの頃からのファンだというからスゴイ。読むだけではなく、長じては、自筆原稿とか、関連文献漁りにも精を出し、その質量、司馬遼太郎記念館・山野分室くらいの充実ぶりかもしれません。


のみならず、自分の娘に、福田みどり夫人と同じ「みどり」の名前までつけてしまった。で、これを聞いた司馬センセイが言うに「山も野もみどりか。タカラヅカみたいでよろしいなあ」と。司馬センセもなかなか洒落っ気ありますなあ。それにしても、法学部教授にしてはミーハー過ぎません?山野センセ。


145頁「大学図書館で働く人に捧げる十章」に、日頃、自分が思っていることとそっくりのことが載っているのでコピーしました。  

 万巻の書を読みあさって、ついに人生のなんたるかを悟らぬままの人もいれば、書物なんか知るものかの人生の達人もいる。この世には、文字とも書物とも学校とも縁がないまま、かしこく、心おだやかに暮らした人がいっぱいいたことを時折想いおこそう」やて。山野センセ、どっちがホンネですねん。なお、著者は関西大学図書館館長でもあります。(五月書房 2006年8月発行)


表紙イラストは、関大出身の漫画家、いしいひさいちの作。
本棚にしがみついてるのが山野センセイ。

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