鈴木信行「同窓会に行けない症候群」を読む

 巻頭に黒地白抜き文字でこう書いてある


今、日本には
2種類の人間がいる
同窓会に行ける人と
行けない人だ


 ご大層なコピーに「それがどないしてん、たかが同窓会の話やろ」とイチャモンつけたくなります。以下、236ページに亘って同窓会に行く、行かないが論じられる。生き方ハウツー本もいよいよネタ切れになったようであります。因みに、著者は日経新聞出身。


前記のコピーは経済事情の変化によって同窓会に行ける人、行けない人の差が出始め、特に現在50歳代の男性に顕著だという。昭和時代では同窓会の案内が来たら大方の人は定例行事だと思って参加する人が多数だった。しかし、平成の30年間で経済、労働環境は大きく変わり、参加者が5割以下とか、大巾に減少してしまった。


同窓会に出席したくない事情とは何なのか。
1・会社で出世しなかった。
2・起業して失敗した。
3・「好き」を仕事にできなかった
4・「仕事以外の何か」が見つからなかった。


概ねこれらの事情が「出席したくない」理由だという。とりわけ、就職氷河期と云われたバブル景気崩壊後にかち合ってしまった人は好きな仕事、会社を選り好みする余裕などなかったから「明るい気分で出席」できる人は少ない。学校時代の懐かしい話に打ち解ける気持ちのゆとりなんかなく、多くが「欠席」の返信を出す。幹事さんも苦労するがこんな欠席多数が続くと世話するひともいなくなって同窓会自体が消滅しかねない。


では、逆に、なぜ同窓会に出席するのか、といえば、学校時代は成績の優劣やモテる、モテない、という差別はあったにせよ、とりあえず仲間意識が優先されたから小さいドジや格差は無視できた。この平等感があるから同窓会参加は楽しかった。社会人になってからの格差は当然できるけれど、それを気にしないでおれる、ゆるい連帯感は失われなかった。
 そんな昭和時代の同窓会を思い出すと前記の「出席したくない四つの事情」は差別意識や劣等感を気にしすぎではないかと思うのですが、それは甘いと云われそうな気がする。昭和時代の同窓会の感覚で判断してはいけない。


同窓会に出席しにくい事情が増えた現在、著者は出席、欠席、どちらを推賞するのか。平成時代に就職した人には欠席を奨める。義理よりホンネを優先せよ、である。明るい話より暗い話が多いであろう同窓会に出席して良い思い出になるはずがない。ならば参加費用で気の合う友人と呑み会をするほうがずっと楽しい。同窓会という「文化」は徐々に影が薄くなってゆくような気がする。(外国には同窓会という卒業生参集行事はあるのだろうか)

 

不幸な平成時代を忘れて令和の時代にはどんな職業がしっかり稼げ、社会的地位も得やすいか。著者は例として下記のような仕事を挙げています。

①ホワイトハッカー    ②人工肉クリエーター ③ドローン制御技師
②データサイエンティスト ⑤サイボーグ技術者  ⑥スポーツプレイヤー
⑦インセクトブリーダー  ⑧オンライントレーダー

平成時代に生まれた皆さん、しっかり勉強して、稼いで、明るい同窓会をつくりませう。(2019年 日経BP発行)