加瀬英明「ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか」を読む

今週のお題「最近おもしろかった本」

加瀬英明ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか」

 下に紹介する「四天王寺 古本市」で買った9冊のなかの一冊。著者は外交評論家。中曽根内閣などでは首相の特別顧問として対米交渉の現場で働いた。一方、びっくりしたのは、著者はオノ・ヨーコの従姉妹であり、ということは、故ジョン・レノンと親戚関係にあることだった。知りませんでした。レノンの日本贔屓はひとえにヨーコの影響によるものだけど、宗教観においてもレノンの考えは日本の神道に近いと著者は云う。
ジョン・レノンのつくった歌で一番ヒットした「イマジン」はこう歌う。


 ♪天国なんてありゃしないと、想像してご覧
 地獄もありゃしない


 ♪そして宗教もない
 そうしたら、みんな平和に生きられるってさ・・・


16ページ「私は「イマジン」は神道の世界を歌っているにちがいないと思った。そして、そうジョンにこう言った「神道には空のどこか高いところに天国があって、大地の深い底のほうに地獄があるという、突飛な発想がない。私たちにとっては、山や、森や、川や、海という現世のすべてが天国であって、人もその一部だから、自然は崇めるものであって、自然を汚したり、壊してはならないのだ」と説明した。
 神道では人が死んだ後に魂が地上に留まると考えられ、天国も、地獄も、死後の賞罰もない。神世は目に見えないどこか彼方に漠然と存在している。ヨーコはジョンを口説いて靖国神社、さらに伊勢神宮を参拝した。(引用ここまで)


「イマジン」は世界中の若者のあいだでヒットしたが、アメリカや欧州のキリスト教保守派からは神を否定し、冒涜する歌だと反発が起きた。日本ではそんな批判はなかったが、かように熱心なキリスト教徒には寛容さがない。


ジョン・レノンについての話はこれでおしまい。以後は日本の神道キリスト教イスラム教とは全く異なることの解説になります。すでに多く語られた解説で特に目新しい視点はないけれど「神道とはなにか」の説明は難しい。そもそも論理的に語れないテーマだから仕方ない。本をたくさん読んで学ぶことも大事だろうけど、日々の暮らしのなかで、また、人生を俯瞰するような場面で「感じる」体験が大事なのかもしれない。


正直言って、私たちは日頃の暮らしのなかで「神」や「神道」を意識することはゼロに近いし、関心もない。しかし、著者は言う。あの阪神大震災東日本大震災における日本人の振る舞いは他国の人が理解に苦しむくらい混乱が抑制され、和を保った。外国では普通に起きる略奪や暴力事件は皆無だった。それは教育や訓練の成果ではなかった。一人ひとりの心のもちようがそうさせたとしか言いようがない。自意識はゼロだけど、私たちは心の隅に神の教えを持ち合わせているのではないか。文字すらなかった古代から私たちは目に見えぬ神の道を歩んでいる。(2011年 祥伝社発行)


加瀬英明
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E7%80%AC%E8%8B%B1%E6%98%8E

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出会いの愉しみ・・四天王寺 秋の古本市へ(2022年10月11日)

 今回は購入予算を1000円と決めて出かけました。過去には購入したけど読まなかった本がかなりあるので、せめて7割くらいは読了したい。読後はすべて「まちライブラリー」へ寄付します。購入した本は下記(写真)の通り。

・中田 潤「新庄くんはアホじゃない!」
加瀬英明ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか」
阿川弘之「国を思うて何が悪い」
・ひろ さちや「どの宗教が役に立つか」
・中野考次「なにを遺せますか」
斎藤美奈子「趣味は読書」
・アラン「幸福論」
森本哲郎「月は東に」~蕪村の夢 漱石の幻~
李登輝小林よしのり李登輝学校の教え」


発行年は1990~2010年のあいだで一番古いのは1987年。価格は「幸福論」のみ200円、他の8冊は100円。9冊計で1000円です。(定価では約11000円)

 

古本市会場 向こうのビルは「あべの ハルカス」

 

沈黙の争奪戦。100円均一の台は大繁盛です