中村仁一・近藤誠「どうせ死ぬなら ”がん” がいい」

 がん世界の問題?医者、近藤誠氏と「大往生したけりゃ 医療とかかわるな」というヒット作を出した、中村仁一両氏の対談録。現代の医学の常識をあざけり、イヤミを言いたい放題という本であります。


 本来、クソマジメに論ずるべきテーマを面白おかしく書けるのは、医学の本流から外れた、アウトサイダーだからでせう。ガンを患ってる人、介護で悩んでる人には、目からウロコのヒントに出会えるかもしれない。


近藤センセがしつこく述べている「健康診断は受けるな」の提言に駄目男は賛成するものであります。定年を迎えたサラリーマンが「この機会に健康状態をしっかりチェックしてもらおう」と人間ドッグを利用すると、あちこち具合の悪いところが見つかる。血圧がどーたら、糖尿がどーたら、心臓がどーたら・・と。これを無視出来る人は少ないので、治療をはじめることになります。定年を機に、病人生活がスタートするというわけです。アホクサ、と思いませんか。


年に二回くらい、役所から「健康診断のすすめ」の案内が届くけど、一回も受診に出かけたことがない。もう50年くらい無視している。だから、診断受けた人より病気が多いか、というと、むしろ逆だと思ってます。きちんと診断を受けていたら、年中、クスリを手放せない生活だったかもしれない。お金も要ります。


だからといって、特に病院嫌いというわけでもなくて、あっちが痛い、こっちが辛いと自覚があれば、すんなり病院へ行って診てもらいます。必死にガマン、というほど我慢強くないから、さっさと出かけます。
 痛くもないのに積極的に出かけるのは歯の掃除だけ。ほぼ毎月、なじみの医院へ行く。10年以上前、あんた、入れ歯になったら、旨いもん食べても、味わからんようになるで、と脅かされて、以後、まじめに通うようになりました。


軽い表現で書いてあるので、つい軽く読み飛ばしてしまうが、介護、延命治療、死生観についても、啓発される点が多い。定年を迎える年になっても、まだ自分の死生観を持ち得ない人がいる。死には恐怖感しかなく、病気は治してもらうのが当たり前みたいに思ってる、ガキみたいな年配者がいるとセンセイは嘆く。少年よ、大志を抱け、老年よ、死生観をもて。(2012年 宝島社発行)

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読後4年目、リアルがん患者になった
 本書を読んだのは2015年。2019年に大腸がんが見つかり、発見遅れで開腹手術、大腸を30cmちょん切られて、以後、後遺症に悩まされる日々。他人事ではありませんでした。トホホ。しかし、後悔はナシであります。手術後に外科医の説明を聞いて「余命」をイメージできた。トシを考えれば「先が見えた」と自覚できるほうがずっとありがたい。何より「終活」の励みになる。


「人生の残り時間」を意識しながら暮らすことは、そうでない健康な人より生活態度にメリハリをつけやすい。欲がなくなるぶん、不満や後悔も減らせる。というわけで「どうせ死ぬなら”がん”がいい」と納得したのであります。

 

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