Nostalgia ~旅の思ひ出~

なつかしい旅のワンシーンを綴ります

路線バスが燃料切れという珍事

 前回は宮古島無人空港で感じた旅情?を綴りました。さらに南の石垣島でも珍しい体験をしました。この旅は年下の友人S君との二人旅、往復の乗り物を除いては予約とかナシのええかげんな旅です。当時の八重山地方は観光情報なんかほとんどありませんでした。


 石垣島についてから二日目、海岸風景が美しいと聞いていた川平湾へ行きました。お正月ですが半袖で過ごせそうなぽかぽか陽気の日です。街中から島を一周する路線バスに乗って川平湾へ。うわさ通り珊瑚礁の海がきれいで前景は広々した草原が続くなか、停留所ではないところでバスが止まりました。


どうした?・・運転手が降りて止まってるバスへ向かいます。しばらくして戻って来て言うに「あのバス、燃料切れで停まってる」
 え!そんなアホな。乗り合いバスが燃料切れなんて聞いたことがない。で、どうする?。このあたり、今はおしゃれなリゾートホテルが並んでるそうですが、当時は茫々たる草原がつづく未開発の自然風景。往来する車は皆無なので、民家まで歩いて会社に連絡するのが常識だけど、家があっても、たぶん電話がない。


 観光目当ての我々は文句言うどころか、こんな景色の良いところで停まったことを喜んですばらしい風景を堪能しました。では、他の数人の地元の乗客は文句言ったのか、というと誰も苦情を言わず、おとなしくしています。この緊張感の無さに感心を通り越して少し感動を覚えたくらいです。


 結果をいうと問題は解決しました。神が降臨した。奇蹟が起きた、というしかないハッピーエンドになったのです。10分、20分・・いやもっと経ったか。向こうの方からブルドーザーがのろのろやってきた。このブルにバケツとポンプつきのビニールホースが積んであったのです。なんという大幸運!。


 対向バスのぼんくら運転手は大喜びでブルのおっちゃんからホースとバケツを借り、我々の乗ってるバスから燃料を吸い出し、自分のバスに注ぎました。運転手には白いタオルで頬被りしたおっちゃんが神に見えたにちがいない。


 自分が宮沢賢治だったら、この感動的な場面を「神は来ませり」と詩にしたかもしれんなあ・・。いっぽうで、この大迷惑に腹がたたないどころか、一緒に喜んでる自分を「アホちゃうか」とイジッたり・・不思議な気分でした。
 けっきょく、1時間以上遅れて町の営業所へ戻っても謝罪の言葉なし。(言ったかもしれないが、方言だったら自分たちにはわからない)もし、内地のバス会社でこんなドジをやったらニュースになり、社長さんは深刻な顔つきで謝罪の記者会見をする場面です。ひょっとして、あれは珍事ではなく日常?ま、そこまで疑いたくはないけど。


右が燃料切れのバス。中央、白いタオルで頬被りしたおっちゃんが「救世主」

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