◆吉田秀和「マーラー」を読む

 マーラー作品に関するウンチクを傾けた本。なのに、本文の頭ではこう書いてある。「マーラーはむずかしい、私には」。のっけから何です?専門家がそんなこと言ってしまってはド素人の dameo なんか取りつく島がないでせうが、フガフガ。勘ぐれば、マーラー作品の評論を書くのはとても難しい。でも、書かねばならないので、あらかじめ予防線を張っておく、ということでせう。音楽を言葉で語ることの難しさ、分かって下さいまし、であります。特にマーラーは。


 著者は、本書がマーラー入門書になってくれたら嬉しいと言ってますが、入門書にしては内容が難しすぎる。それとも自分の頭が悪すぎるのか。まあ、後者でありませう。で、小難しいことは書かないことにして、駄目男の愛好曲は、交響曲でいえば、一番、二番、と「大地の歌」の三曲。本書で、そうだったのか、と納得したことがあって、大地の歌の冒頭、おたまじゃくし10個ぶんくらいは、シューマンピアノ曲「交響的練習曲」の冒頭のメロディとそっくりさんだということ。両方のメロディを覚えていたので納得です。どうして今まで気づかなかったのか。剽窃か、偶然の一致か、はわからない。


マーラーファンの誰もが誉める「九番」の交響曲も聴き直してみた。あちこちに「一番」のモチーフが再現されるのがやや気になる。それと第四楽章のコーダの美しいがもったいぶった曲想が好きになれない。ブルックナーの「九番」のコーダのほうが余程感銘深い。ま、これらはあくまで個人の好みでありますが。・・というわけで、dameo は全面的にマーラーにのめり込めないのであります。(2011年 河出書房新社発行)

 

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