鈴木淳史「わたしの嫌いなクラシック」

 よくもこんなしょーもない本を出版したもんだ、と感心しつつ読みました。著者は1970年生まれだから出版時に35歳、この若さで、音楽世界を知ったかぶりでボロクソにけなしてる本であります。言うまでも無く、書名はクラシック音楽自体を貶してるのではなく、世評高いクラシックの曲や演奏者のなかに嫌いなものがある,と言う意味です。


読んでみると、年若いわりにはすごい量の音楽を聴きこなしてることが分かり、悪口を書くにもその理由を細かく記述していて、それなりに「労作」なのであります。ま、単純に言って、音楽に限らず、芸術作品は褒めるほうが悪口言うより易しい・・というか、無難であります。そもそも悪口しか言えない(書けない)批評家はメシ食えませんからね。


第二章 <わたしの嫌いな演奏家
 まっさきに登場するのがカラヤンです。20世紀最高の人気指揮者が大キライだと。著者が言うに「カラヤンのやったことは道端の石ころを削って磨いてピカピカにして「これ、立派でしょ」と売り込む。そんな音楽づくりが嫌いだと。凡庸な曲を飾り立てて名曲ふうに仕上げて売り込む。その才能は認めるが
、その営業的センスが嫌いだと。実はカラヤンのこんな嫌われ方は鈴木センセがライターになる前から世間に広まっていました。残念。ほかに、カール・ベームやダニエル・バレンボイムサイモン・ラトルもしっかり嫌ってます。


書き出せばキリがないのでヤメにして、dameo の嫌いな作曲家・作品を書くと、シューベルト交響曲は<未完成>を含めて全部嫌い。退屈にして冗長な音楽は睡眠剤として役立つけど、何千円も払って聴きたいと思わない。営業的に三大交響曲といわれる<運命><未完成><新世界>のなかで一番嫌い。
 では、誰が好き?といわれても・・困りますけど。でも、一番熱心に聴いたのはブルックナーです。ライブ演奏にこだわったために、交響曲の四番、五番、七番、八番、九番、の五曲を「聴きこなす」のに20年を費やした。われながらアホちゃうか、という思いでありますが、耳から仕入れた聴覚遺産?です。


ついでに、クラシック音楽のヴォーカルで dameo が一番好きな曲は?・・ベスト3を挙げてみますと・・
モーツアルト・・・アヴェ・ヴェルム・コルプス
ラフマニノフ・・・ヴォカリーズ
③アレグリ・・・・・ミゼレーレ いずれも自分の臨終のとき聴けたらサイコーでありますが、願いが叶う可能性は0パーセントですね。


②はわりあいポピュラーでTV-CMでバックに流れていたような気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=zzplYkuiZSA
同じ曲のチェロ編曲版
https://www.youtube.com/watch?v=SVyza9jzw18

(2005年 洋泉社発行)