伊吹かのこ スーパーの野菜売り場でパートやってます

 著者の伊吹かのこさんは学生時代から漫画家になりたくていろんなコンクールに応募したけど連戦連敗、この世界の厳しさを味わった。で、生活の糧を得るために選んだ仕事がスーパーの野菜売り場のパートだった。


 ま、それがどうした、という平凡?な生活がはじまったのですが、神は見捨てず・・この珍しくもない仕事体験が本書の発行につながったのだから夢をあきらめてはいけません。(株)KADOKAWAのコミックエッセイシリーズの一つとして選ばれ、出版に至りました。ご本人、いかほど嬉しかったことでせう。一生のいい思い出になります。その前提にパートさんとしての誠実な仕事ぶりが認められたはずです。


 「他人は何でメシを食ってるのか」について知りたがりの dameo はこういう本を読むのが好き。伝記を読むのが趣味なのもアカの他人の生業、人生に興味があるからです。本書はスーパーの、客には見えないバックヤードの野菜担当者の仕事の紹介です。


 売り場を見れば野菜担当者の仕事はあらかた見当がつくけど、カット、小分け(秤やサイズで)包装、ラベル貼り、陳列、が主な役目、チーフは正社員でこのような作業はパートの役目、普通は3人で野菜、果物類をカバーします。


 はじめはド素人だからモタモタするのは仕方ないが、ワザと早さを求められるのが「包装」で、これは数をこなして慣れるしかない。ラップでくるむ専用の機械があるからキャベツの半切りなんかピシッと包装できる。実際にはコツがあってこれを習得できたら一人前。一方、ラベル貼りなんて簡単な作業ですが、ときどき値段を間違えてプリントするドジがあり、あせりまくって陳列した商品を全部張り直さなければならない。そんな場面、見たことあるような・・。


 チカラ仕事もあって夏のスイカの季節ではドでかいスイカを半分、四等分、八等分・・と早く正確に、カンに頼って切る。涼味満点の果物なのに、裏方さんは汗だくという場面です。カボチャはもっと腕力が要ります。


 他店との厳しい競争のなか、大事な値決めは誰がするのか、正社員のチーフの役目と思いがちですが、意外にパートのおばさんが決めることも多いらしい。
販売者にして消費者でもあるパートさんの生活感覚で「今日はこの値段でいく」の判断が妥当であること納得できます。上司任せより「自分たちが責任をもつ」
ほうがやりがいもあるでせう。もちろん、失敗もある。


 パートさんに「昇級試験」があること、知りませんでした。長期に働く人の義務だという。2級は商品づくりと品出しの実技、日常の仕事がレベルに達してるかどうか試される。1級は接客応対や事務作業という知的な仕事の向き、不向きを試される。合格すると、2級は50円、1級は100円、時給がアップします。(各社がやってるかどうか不明)そうか、パートさんも競争社会だったのか。誰でも簡単にこなせると思ってはいけないのであります。(2014年(株)KADOKAWA発行)

 

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