佐藤 優「人をつくる読書術」を読む

他社から引っ越して来ました dameo と申します。自慢できるような読書歴はなく、年に30~40冊くらいしか読まない(読めない)平均的読書人です。本のジャンルはノンセクション、興味もてばなんでも読みます。

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 本の広告コピーでは「現代の知の巨人」などと称されていて、じっさい、紛う方なきインテリといえば、まずこの人の顔が浮かぶ。年を重ねて最近の風貌はなんとなく西郷隆盛に似てきたような・・。南方系の血筋、人生半ばで挫折を体験している・・ことも似ている。(西郷隆盛は写真嫌い?で、肖像画しかないらしい(不詳)ま、どうでもいい話ですけど。

 

 なぜ作家になったのか・・生活費を稼ぐためである。外務官僚のときに北方領土問題で逮捕され、500日間、ムショ暮らしをした。とりあえず生活費を稼がねばならない。で、本を書いた。(ムショでの執筆は許される)これがスタートでした。幸い、高い評価を得て作家人生の礎になった。


 この人のすごい読書能力、執筆能力はご存じの方多いと思います。官僚時代からの延長で、執筆は毎日原稿用紙30~40枚分、読書は一日に10~20冊。これを必死のパッチで、ではなく、普通にこなしている。読書は最短で一冊5分、普通に速読で30分。むろん、半分くらいは書評や推薦依頼目当ての献本ではと思いますが、それにしても密度とスピードは常識外れです。

 

 読書のジャンルもめっぽう広い。政治、経済関係はもちろん、数学、哲学、宗教、歴史から古典文学、現代の小説、エッセイ、漫画まで、ほぼオールラウンドです。わずかの空き時間を見つけてはDVDで映画や芝居も楽しむ。ときには講演会も行う。

 

 「知の巨人」なるレッテルが出版社のイメージ戦略によるものだとしても単純な誇張やハッタリではありませんね。著者によれば、外務省の官僚、特に外交官は個人差はあれど、知識ぎゅうぎゅう詰め人間が普通で、それが年を重ねて洗練され「教養」として身につく。外国の大使や外交官は日本の外交官の印象を以て「日本国民」の何たるかをイメージするから責任重大です。外国の役人に歌舞伎やオペラの話題を振られてうろたえるようでは外交官失格です。

 

 著者自身の体験を顧みて、幼児から中学生くらいまでの読書のクオリティが生涯の人格、教養に影響するのではと述べている。佐藤氏の両親は本の押しつけなどはせず、しかし、本人が希望した本は大人向けの高価な本でも買ってくれたそうだ。金持ちではなかったけど、家庭環境には恵まれた子供時代だった。また、母親がキリスト教信者だったことから感化されて育ったが、高校、大学でマルクス資本論」に出会い、相反する思想のどちらにも惹かれてずいぶん悩んだらしい。大学を同志社の神学部を選んだことで真剣に宗教を学び、悩みまくった末に洗礼を受けた。なんかイメージと合わないような気がするけど、佐藤氏はキリスト教信者である。(2019年 青春出版社発行)

 

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