小泉今日子「小泉今日子 書評集」を読む

 いかに芸能界オンチの dameo でも小泉今日子の名前くらいは知っている。ミーハー族のアイドル。そんなタレントが書評集なる単行本を出すなんて何を偉そうぶってるのか・・。で、「はじめに」を読むと、今日子サンは読売新聞書評欄で執筆する書評委員でした。へえ~~。どうやら久世光彦(故人)が彼女を委員会に売り込んだらしい。


アイドルがえらい出世です。しかし、著者略歴をみると・・1966年生まれ云々、あちゃ~、あと数年で還暦(60歳)ではありませんか。なにがアイドルやねん。でも、これで違和感が消えました。(まだ30歳くらいと思っていた)小泉おばちゃんなら書評委員ヨシ、であります。


巻末のインタビュー記事を読むと書評委員会の雰囲気があらかた分かる。委員は約20人。選ぶ本はスタッフが200~300冊の本を用意し、大きな会議室で全員が回し見して各自が何冊か選ぶ。それを持ち帰って読み、書評を書いて提出する。委員には川上弘美米原万里といった作家や川村二郎や苅部直などの学者、資生堂福原義春、第一生命の櫻井孝頼など、大企業のトップもいたから小泉おばさん、びびって当然です。


さりとて、書評委員も読売のスタッフも、小泉今日子がタレントだからといって低レベルの文は許さなかった。短い文でも何度も書き直しを命じた。作文は素人だからという甘えは通じない。この屈辱や劣等感に耐え、克服できたから10年続けられた。おかげで、語彙が豊富になった、人に何かを説明するときの話し方が上手になった、と本人が述べている。もし、これらの経験がなかったら、ミーハーアイドルの延長で年を重ねていたかもしれない。


書評は400~1000字くらい。ビギナーとは思えないこなれた文章でとても読みやすい。ちょっとしたフレーズ、言い回しにセンスの良さを感じる。読書が人を成長させること、元アイドルから学びました。書評を読んで自分もこの本を読んでみたいと思ったのは、中村 弦「ロスト・トレイン」井上ひさし「十二人の手紙」大島真寿美ピエタ」など。(2015年 中央公論新社発行)

 

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