<紙の本?>をつくりませんか(4)

◆知人の形見づくりのお手伝い

 Tさん(97歳W))とdameoは広島の同人誌「ひろしま随筆」の仲間でした。同人誌はメンバーの高齢化で数年前に解散しました。そして各人の手元には数十冊の作品集が残されたのですが、見た目が薄っぺらで貧相だし、50年前の創刊時のものは紙が茶色に変色して読みづらくなっています。もし、当人が亡くなればゴミ扱い、廃棄されること必須と思われました。しかし、昔の作品を読むと、その時々の暮らしぶりや人間関係が綴られていて捨てがたい。

 

 これを編集、装幀して「形見」として残しませんか。Tさんに提案して了解を得、編集にとりかかりました。幸い、同人誌もA5サイズなので、コピーは楽ちんです。目次を新しくつくり、「あとがき」をご本人に書いてもらい、表紙をデザインしてファイルに収めれば完成です。

 

 薄っぺらな冊子なのに、何十年分もまとまると、ずしりと重い作品集に生まれ変わり、喜んでもらえました。これで「ゴミ処分」される心配は無くなりましたが、せっかくの「形見」を当人の葬儀のときにウッカリ棺桶に入れてしまわないようにご家族にお願いしました。

 

 もう一人、Dさん(M)は昭和3年生まれ。記憶力が抜群に良く、昔の暮らしのことなど詳細に覚えておられるので、子供時分の遊びのことを綴ってもらえませんかとお願いしたところ、快諾して下さって、原稿用紙にしたら百枚?ぶんくらいの思い出話を寄せて下さいました。遊びの話だから写真がいるのですが、なにしろ戦前の話なのでぴったりくる写真を探すのに大苦労、制作に3ヶ月くらいかかりました。

 

 しかし、苦労したけれど「形見」としてはユニークで楽しい読みものになりました。今から、50年、100年後に子孫の方が読まれたら、昭和時代初期の子供の遊びを知って「ナニコレ?」と驚かれると思います。竹馬、独楽、メンコ(ベッタ)、おはじき、おじゃみ、・・なんて遊び、とっくに死語になり、歴史の本にしか載ってないかもしれません。Dさんは、本ができて一年余り後に92歳で天寿をまっとうされました。

 

 Tさんの随筆集もDさんの思い出話集も「ミニ自分史」となって家族に残されました。ささやかな記録ではあるけれど、これがなければ本人の情報はあいまいな「思い出の口伝え」だけで語られることになる。それも何十年か経てば消滅し、仏壇の過去帳に記された出自情報だけが存在証明になります。昔、有名だったソニー?(不詳)の宣伝文句「記憶は消える 記録は残る」をひょいと思い出しました。

 

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       戦中戦後の写真を探すのに苦労しました。