大阪城の北、1キロほどの大川端にある藤田美術館を初訪問。知名度はイマイチですが、かの「窯変天目茶碗」を有する美術館のひとつ、といえばご存じかも知れません。戦前築のおんぼろ美術館を斬新なデザインで建て替えました。係員の説明があって設計に際してどんなアイデアを取り入れたか、裏方といえる情報をたくさん教えてもらいました。いろんな賞をもらっただけあってセンスの良さと職人の高度な技術力に感心しました。
まず、この美術館には収蔵庫がない。これだけでも驚きです。作品をどこに保存しているのか、といえば壁面の陳列ケースの下や中置きのショーケースの下部です。当館には高さ3mの仏像とか大型のものがないのでこんな工夫で収納できる。もちろん、空調や地震対策はしっかりしている。これだけでも大きな合理化です。もうひとつ感心したのは陳列品を保護するガラスの性能です。これが最高レベルという最新の無反射ガラスの採用でとても見やすい。但し、これには難儀もあってガラスを意識しない鑑賞者がゴチンとおでこをぶつけてしまうことがしばしば、だと。そのほか細部で工夫がたくさんあって楽しい解説が聞けました。これが役所とかの公共施設なら「ガラスにご注意下さい」の注意表示をするのですが、そんなヤボは御法度だそう。
イジワルやなあと思ったのは2点。ひとつはキャッシュレス入場で、現金でのチケット購入はできない。ふつうにあるはずのチケットカウンターや自販機がない。(客の少ないときはカフェのスタッフが対応している)カードでも交通系は駄目という。で、カード持ってませんねん、というと「次回からは必ずカード決裁をお願いします」と命令調で言われて少しムカつきました。
もうひとつは作品の解説文表示がないこと。解説はスマホで聞いて下さいと。作品そばにはタイトルと作者名の小さいプレートしかない。しかも、思いっきり照明を落としているので、まあ、解説文があっても読めません。いまどき、スマホを持たない鑑賞客などいない、という発想での取り組みです。
自分のような時代遅れロージンにはなかなか厳しいシステムですが、遠からず、これが常識になるかもしれない。そういえば、古美術専門の渋い美術館なのに、滞在中にロージンの鑑賞客は見当たりませんでした。(8~9割は20~50歳くらいの女性でした)。館内に飲み物の自販機はなく、カフェでの喫茶もキャッシュレスオンリー。とことん合理化=運営コストの削減を図りたいという意図はわかるけど、まだデジタル化の過渡期なのだから、もうチョット穏やかな対応をしてもらいたいものです。 (3月20日)
藤田美術館HP
https://fujita-museum.or.jp/
美術館の玄関
庭園と茶室