イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む

 文庫版が1998年に発行されてから2011年までの13年間に26刷を数えている。地味ながらロングセラーを続ける理由は何だろう。想像でいえば、イギリス人のおばちゃんのものすごい行動力、観察力と、それにしてはクールな文章表現が読者に大きな信頼感を与えてるからではないか。全570頁に詰まる情報量の多さに圧倒されながら、読者は朝鮮の旅をしているようなリアリティも味わえて、凡百の紀行文を寄せ付けない。それにしても、全身好奇心のかたまり、スゴイおばちゃんであります。


著者が旅したのは、日本が進出し、西洋諸国も国益を求めて外交官を駐在させていた1890年代、閔妃暗殺事件など惨劇も起き、国王がロシアの公使館に保護を求めて居候するなど、とても国を統治できる状態ではなかった。そんな混乱のさなかに見た朝鮮という国は、王宮以外はスラム街のみといった、貧しくて未開の国で、誉める点など探しても見つからない。日本と比べて、文明文化の水準の低さに驚いている。


本書は当然、朝鮮語にも訳されて出版されたはずでありますが、朝鮮の人が読めばさぞかし不快でありませう。生活は貧しく、国民は一部の農民を除いて怠惰そのものであり、国王も救いがたいほど無能だった・・。こんな記述が延々と続くのだから、読みたくありませんよね。もしや、現在でも、韓国内では、この本の出版はタブーになってるのではないか。


「日本による植民地支配」を恨みまくってる韓国ですが、今から120年前、韓国統治のために進出した日本をイザベラ・バードはどう見ていたか。最終章に書かれている文の一節を引用します。


564頁より引用
 「わたしは日本が徹頭徹尾誠意をもって奮闘したと信じる。経験が未熟で、往々にして荒っぽく、臨機応変の才に欠けたため、買わなくていい反感を買ってしまったとはいえ、日本には朝鮮を隷属させる意図はさらさらなく、朝鮮の保護者としての、自立の保証人としての役割を果たそうとしたのだと信じる」 (引用ここまで)

 日本になんの義理も無く、朝鮮にとってもアカの他人だったイギリス民間人の見解です。もし、日本が朝鮮を統治せず、代わりにロシアや中国が統治していたら、朝鮮の運命はどうなっていたか。日本の統治よりはずっと幸せな国になっていたと言えるのか。そんなの100%あり得ない。ロシアによる統治の幸不幸は現在のウクライナの状況を見れば誰でも理解できる。一番大事なことは、当時の朝鮮は、国家として自立できる能力は全くなかったことであります。韓国人は日本の悪口を言う前に、己の無能をしっかり認識せよ、であります。(1998年8月 講談社発行)

 

 

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中国は民主主義国家か?

 Eテレの「サンデル白熱教室」という番組をはじめて見た。(6月4日夜)議論のテーマは「中国は民主主義国家か?」で、ハーバード大学東京大学、上海の復旦大学の学生6人ずつのグループがコロナ対策のため、おとなしく議論する30分番組。


最初の10分ほどを見逃したけれど、結論を書くと、上記の問いに「YES」と答えたのは、ハーバードが一人、東大はゼロ、復旦大学生は6人全員。復旦大の学生さんには「民主主義を語る資格ナシ」と言いたいけれど、中国政府の行き届いた洗脳ぶりに暗然たる思いがしました。(当大学は東大並の優秀校という)
 もし、彼らの意見がホンネだとしたら、中国以外の国民が考える民主主義とは水と油ほどの違いがあって議論にすらならない。彼らの字引には「独裁主義者」って言葉は無いんでせうね。


彼らは「自分たちには思想、表現の自由がない」なんて、これぽっちも考えたことがないのか。もしや、今日、6月4日が天安門事件の日だったことも知らないのではないか。この事件についてはdameo のほうがよほど詳しい。おいおい! 当然だけど、あの息苦しいコロナによる「上海封鎖」も是とする。習近平に異を唱えるなんてありえないのが中国式民主主義であります。


ハーバード大で「YES]と答えた学生の意見は、気候変動問題のような大規模で利害が複雑に絡む問題では手続きだけでややこしい民主主義よりも有能な権力者がリードする方が解決しやすい、という観点からのYESだった。