宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読む

 思い出してみれば、この本、過去にも何度か読んでいて、しかし、途中でヤンペしてたことに気づきました。一度で読み切るにはアクビが出すぎだったからかもしれない。嗚呼、お前はなんと詩心のないカス人間なのかといわれそうであります。まあ、ファンタジーといっても「不思議の国のアリス」ほどの唐突感(びっくり感)はありませんが。


しかし、賢治が生きた時代、リアリズムの眼で世相を見るのが普通のところ、ジャンルや境界にとらわれずに夢想世界に遊び、天空列車で旅をするなんて他の作家にはできない。発表当時にいかほどの評価を得たのか知らないけれど、こういう4次元作品はあと百年たっても評価は下がらないと思います。(百年後に4次元列車ができていたらどうしよう)


銀河鉄道の乗客たちはみんなファンタジーな人ばかりですが、青年と幼い姉弟は「乗っていた船が氷山に衝突して沈んだ」と話すことから、これはタイタニック号沈没事件からイメージしたと思われます。ちょっぴりリアル世界ネタもあるのですね。


そして主役の「銀河鉄道」。これは岩手軽便鉄道の姿を借りたものらしい。イラストで描かれる姿も似ています。もう現業の鉄道で再現するのは無理だから、ディズニーランドあたりで21世紀の銀河鉄道を走らせたらどうでせう。だったらレールは要らない? ヴァーチャル列車なら要りませんね。(1990年 集英社発行)