弘兼憲史「弘兼流 60歳からの手ぶら人生」を読む

 漫画家が書いた老後の人生ハウツー論。一読しての感想は弘兼センセはとてもまっとうな(常識的な)人物であるとヘンに感心してしまいました。同業者で対極といえるのは赤塚不二夫です。なんとした違いでありませう。むろん、作品のキャラも全く異なる。


そんなマジメな弘兼センセの人生案内だから、中身は評論家の書くものと変わらず、読んで退屈します。身辺整理から老後のお金の問題、友達付き合い、女房との関係、など、すでにあちこちで語られたハウ・ツーを書いています。漫画家だからユニークな発想で・・と期待したのがまちがいでした。


運動のススメの項目で推薦しているのがゴルフ。ご自分が趣味でやってるから奨めているのですが、退職後にゴルフができるロージンは経済的にかなり恵まれた人に限られている。なのに、ためらわずに書けるのは弘兼センセ自身が「人生勝ち組」だからです。それが分かっていない。


書名の「60歳からの手ぶら人生」即ち、シンプルライフを同輩、後輩に勧めながら、自らはしっかり蓄財し、生涯お金には困りません、というポジションでこの本を書いている。不詳ながら、漫画家の中では抜群に手堅い実績と収益を挙げてる人かも知れません。弱者の目線で書け、と言われてもなあ・・がセンセの本音でありませう。(2016年海竜社発行)