古本だけど表紙のデザインが気に入って300円で買った。でも、藤崎彩織って何者ぞ、です。読み始めたら、著者は文筆家ではなく、SEKAINO OWARIというバンドのメンバー(ピアニスト)だった。通称、セカオワだそう。
職業はわかったけど、ミュージシャンがなんの縁でエッセイストになったのか、音楽は今でも現役?らしいけど、ある日「文學界」の編集者から声がかかって同誌にエッセイを書く注文をもらった。もとより読書大好き人間なので、このオーダーに大喜び、その成果が本書であります。(1年半連載した)
前半はバンド結成と売れないゆえのミジメな暮らしぶりが繰り返し描かれる。お金がなくてライブハウスの舞台装置は日曜大工でこしらえた。昼飯代さえけちってベニヤ板を購入した・・なんて貧乏物語が続く。まあ、売れない芸人はだれでも通る苦難の道であります。普通は困窮に耐えかねて喧嘩したり、解散するバンドが多いのに、セカオワはなんとか持ちこたえた。そして、2006年?突如、大ブレーク&貧乏暮らしはオワリになった。辛抱と努力の甲斐があった。
なのに、今や人気は落ち目?なのでせうか。エッセイを書けるくらい時間の余裕ができた。はじめて書いた小説が直木賞の候補になったというから相当の文章力はあるのでせう。もし、上手く転身できたら珍しい経歴をもつ作家になります。でも、資質のベースは子供時分からの読書好きで培われたと思います。
和製「セカオワ」のことは全く知らないけど、舶来の「セカイノ オワリ」なら知ってますよ。ブレンダ・リーが歌った同名の曲です。1960年ごろだったかもなあ。この歌知ってる人たち、しみじみと「コノヨノ オワリ」を迎えてるところです。(2018年 文藝春秋発行)
おしゃれな表紙が気に入って買った。