倍賞千恵子主演「PLAN75」鑑賞          

 6月26日の感想文のおしまいに「安楽死の合法化」を望むと書いたら、そのまんまの映画ができていました。首題の「PLAN75」は75歳になったら生死を自分で決められる法律が国会で可決され、ヒロインの倍賞千恵子が生活困窮の果てに「死」を選ぶ、という、なんとも悲惨な物語です。


81歳の賠償千恵子がノーメークで登場します。あの「男はつらいよ」シリーズの「さくら」役だった千恵子のイメージが残っているオールドファンが見たら思わずのけぞってしまうでせう。映画はフィクションなのに倍賞の容貌はもろ81歳の「リアル」。


もし、日本で安楽死法案が施行されると仮称「PLAN75」を扱う新しいビジネスが生まれる。保険会社のような組織で生命保険加入を宣伝するように安楽死の希望者を募り、身辺整理を含めた関連事業コミで契約する。(約款がどうたらという話は映画では出てこない)


脚本の段階でいろいろ議論されたかもしれないが、安楽死を是とする結末にすれば世間の反感が高まり、倫理的に赦されない筋書き(作品)と指弾される懸念は十分あります。で、・・・倍賞千恵子ばあさんは土壇場で生還する、という場面で終わります。将来、安楽死ビジネスが盛業になると思わせるような終わり方はできなかった。この「ぬるさ」「あいまいさ」が映画作品の価値を貶めたと自分は思うけど、評価は分かれるでせう。


安楽死ビジネスが業績絶好調・・なんて時代になってほしくないけど、75歳過ぎて、金なし、身よりなし、生きがいもなし、という老人は増え続ける。この人たちの生活を支えるのは若い世代しかない。そして、自分の子供や親を平気で殺す「若い世代」に老人の安楽死を是とする考えが広まる可能性はあると思う。老人自身の選択だけでも重い判断なのに、息子や孫に「奨められて」あの世へ追い出される時代がやってきそう。昔々「老人は 死んでください 国のため」なんて戯れ歌があったけど、本気で願ってる人もいる。


この映画では「PLAN75」で安楽死した人は火葬場で五人まとめて焼却される。遺体の供給が増え、見送る人も悲しむ人もいなければ、個人の尊厳より火葬場の生産性が優先される。なんか、妙にリアリティがありますね。 選んだテーマは良かったけど、作品としてはイマイチというのが実感です。(6月30日 なんばパークスシネマ)

映画「PLAN75」予告編
https://happinet-phantom.com/plan75/