樹木希林「一切なりゆき」を読む

 一切なりゆき、というタイトルから察すると著者は恬淡とした性格の人物のように想像してしまうけど、なかなか、どろどろした執念、執心もたっぷりありそうな、複雑な人格の持ち主であります。内田裕哉とのヘンテコな夫婦生活を察しても「一切なりゆき」なんて呑気なこと言えるはずがない。内田裕哉が無断で離婚届を出したとき、希林は裁判を起こして戦った。(勝訴した)ぜんぜん成り行きまかせなんかではありませんて。


 実は樹木希林の出た映画やTVは一度も見たことがなく、見覚えがあるのは冨士フイルムのCMだけ。不美人を誇張したCMは面白かった。この人以外にあんな笑いのとれる女優はいないかもしれない。ご本人はCM契約期間中はその会社の人間だと自覚しており、会社が不詳事を起こせば我がことのように悩む、マジメな一面もある。


 そんな複雑な性格が興味をもたれて、雑誌などのインタビュー記事がたくさんでき、抜粋してまとめたのがこの本。人生論にしては軽すぎるし、これくらい安直な本づくりも珍しいけど、結構売れたらしい。  内田裕哉との愛憎についてもあれこれ書いているけど、読者には何がなんだか分からずじまい。おそらく、娘やその婿、本木雅弘だって理解出来なかったのではないか。(2018年 文藝春秋発行)

 

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