奥田実紀「タータン・チェックの歴史」を読む

 珍しくファッション関連の解説書を読みました。スコットランドの風景や服飾の写真が多くて、なかなか楽しい読み物です。


■お洒落なデザインの裏に暗い過去
 タータンチェックは、いわば地場産業のひとつで、なんとなく中世以後に生まれた織物という気がしますが、実は2000年前の現地の発掘物にこの格子柄が見つかっており、日本でいえば、弥生時代に生まれた、とても古い文化です。シンプルに見える格子柄が連綿と続き、現代のファッションやインテリアにも普通に使われていて、古くささを感じさせないこと、ご承知のとおりです。これくらい息の長い柄(デザイン)は他にないのでは、と思います。


しかし、平穏に連綿と継承されたのではなかった。イギリスは北と南で文化が異なり、常に南のイングランドが北のスコットランドを圧迫、いじめてきた。戦争と和解を何度も繰り返し、犠牲者の山を築いて現代に至るが、モメごとが無くなったわけではないそうだ。


■デザインは登録制になっている
 カタイ話はさておき、タータンの柄が登録制だとは知りませんでした。誰もが自由にデザインして商品化できるのではなく、あらかたデザインを登記するそうです。和装の留柄(留型)と同じように、他者が勝手にマネできないという保護システムになっている。まあ、中国人などは平気でパクるでしょうけど。


というわけで、日本でもオリジナルデザインを登録している団体があり、三越伊勢丹なども登録、英国関係の催事で使っている。世界中で数千のデザインが登記済みだそうです。なにげに見ている格子柄も、歴史やこだわりがあるということです。スコットランドでは氏族ごとにデザインが決められ、日本の「家紋」と同じような感覚で由緒来歴を象徴的に表現しています。


■キルトを着用するときはパンツをはかない!?
 スコットランドのファッションといえば「キルト」。一枚の大きな布を身体に巻き付ける感じでまとう、独自のデザインです。どうしてまとうかは下のイラストをご覧下さい。床に広げた布に座り込んで巻き付けるなんて、えらく難しそうに思うけど、毎日繰り返していたら苦にならないのか。しかし、洗濯はどうするのか?・・センサクしないでおきませう。

 一枚布の様式は、上体部でかさばる、重いなどの理由でリ・デザインされ、現在は上部と下部(キルト=スカート部)に分かれたツーピースタイプが普及しているそうです。そして男性が着用するときはパンツをはかない。ホンマか?と疑いますが、81頁にホンマや、と書いてあります。「真のスコットランド男は下着ナシ」が常識だそう。真の日本男児はふんどし締めてがフォーマル、というのに似ています。(ノーパンは法律で禁止されているのではないみたい)
 公式行事などではバグパイプを演奏しながらの行進場面とかありますが、誇り高きおじさんたちはみんなノーパンで・・ホンマかなあ。(013年11月 河出書房新社発行)

(注)タータンチェック和製英語。諸外国では「タータン」のみで通じる。

 

大きな一枚布に座り込んで腰に巻き付ける。

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女性ファッションでのタータン

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