読書感想文

小川洋子/河合隼雄 「生きるとは、自分の物語をつくること」

大ヒット作品「博士の愛した数式」が縁になって二人は10年くらいの間に数回、対談する機会があり、それをまとめたのが本書。臨床心理学者、河合センセは若い頃、高校の数学教師だった・・とは知りませんでした。 対して、小川センセは数学はシロウト。だか…

岡嶋裕史「メタバースとはなにか?」

まちライブラリー(民間の図書館)の書棚の前でこの本をチラ見していると知り合いのスタッフが「ひゃあ~~、こんな本、読みはるんですか」と驚愕の一声。で、なんか引っ込みがつかなくなって借りてしまいました。 帰宅して、あらためてページを開くと、彼女…

<続> スマホの若年ユーザーに認知症発症

新聞記事にはこんな専門家の見解も紹介してあります。(以下引用)「脳トレ」で知られる川島隆太氏によると、仙台市の5~18歳の児童生徒224人を対象に3年間、脳の発達の様子をMRIで観察した。スマホなどでインターネットを長時間使う子供たちの脳は神…

西岡文彦「ピカソは本当に偉いのか?」

いつかはこんな本が出るだろうと思っていたけど、10年前にこの本が出ていました。20世紀最高のアーティストにイチャモンつけるなんて勇気要りますよ、ホント。しかも著者は自ら版画家であり、多摩美大の教授です。タイトルをどうするか、あれこれ迷った…

<続>紀藤正樹ほか共著「これから起こるマイナンバー犯罪」 <続>黑田充著「あれからどうなった?マイナンバーカード」                                                    

マイナカードは便利だから世界中で普及しているのか、といえば必ずしもそうではないらしい。内容もバラバラでどの国のシステムがベストというのもないみたいです。充実度=便利さ?で最も進んでるのは韓国みたい。登録内容の濃さ、便利さ?では日本よりはる…

紀藤正樹ほか共著「これから起こるマイナンバー犯罪」 

<源泉徴収>システムに慣れすぎた国民 この2冊の本を先に読んでいたらマイナカードの申請はしていなかったかもしれない、というのが正直な気持ちです。2冊とも制度を批判した本だから当然ですが、十分に勉強してから申請した人は少数ではないかと思います…

マイナカードの解説書を読んでます

1月07日の新聞記事。カードの申請は急激に伸びている マイナカードは2年位前に取得しました。健康保険証の代わりに使えるからというのが取得理由。しかし、その時点で使える病院や医院はなくて、未だに一度も使ったことがない。使用するには病院、医院で…

アラン「幸福論」を読む  

ハードカバーの立派な作りに上品な表紙、帯には「この世でもっとも美しい本のひとつである」という惹句。ならば、さぞや有り難い名言、至言の数々が書かれているはず、と期待して開くと・・。ま、ハズレでありました。 まえがきの「ヒルティ、ラッセル、と並…

津野海太郎「最後の読書」を読む

書名を見て、なんか縁起わるう~~と思ったのは他人事ではないからです。で、著者の津野さんって何者と履歴を見たら、1938年生まれ(自分と1歳違いの寅年生まれ、自分は卯年生まれ)劇団「黒テント」の演出家、晶文社取締役、和光大学教授、同図書館長…

高山龍三「失われたチベット人の世界」を読む

自分の母方の家系図を一年がかりでこしらえる過程で本書の著者、高山龍三(故人)が遠い親戚であることがわかりました。10月の記事の小川洋子さんほどの珍事でないにしても「へえ~、そうだったのか」であります。どんな人物なのか、ウイキでぐぐるとチベ…

もう一冊、岸本尚毅「文豪と俳句」を読む

図書館の書棚の「俳人漱石」のとなりに集英社新書の「文豪と俳句」があったので、これも借りてチラ読みしました。俳句づくりも嗜んだ小説作家の作品を解説した本です。漱石の句もでてきますが、前稿で紹介した<菫(すみれ)程な小さき人に生まれたし> はオ…

夏目漱石の俳句集から<秀作>を見つけました

12月13日掲載の森本哲郎「月は東に」の感想文では漱石が敬愛する蕪村と漱石の俳句作品の優劣差が大きいとの感想を書 きました。だから、漱石俳句集なる出版物はないのだと思い込んでしまったのですが eight8eight_888 さんから「岩波書店より単行本で「…

森本哲郎「月は東に」を読む

~蕪村の夢 漱石の幻~ という副題がついている。雑誌に連載したエッセイをまとめた地味なつくりの本でありますが、内容はとてもユニークな発想で、漱石ファン、蕪村ファン、どちらにもおすすめしたい作品です。 誰でも知っている漱石 『草枕』の冒頭と言え…

小林秀雄「モーツアルト」を読む

およそ半世紀ぶりに再読。モーツアルトの伝記や作品論は20冊くらい読んだけど、音楽評論の専門家ではない小林センセのこの作品が記憶に止まっているのはなぜか。文章は上等とは言えないのに、なんか説得力がある。これです。 本書でいちばん知られている文…

和田秀樹「80歳の壁」を読む

同い年の友人からもらった本。老人の健康情報本を次ぎ次ぎ出してヒットさせてる和田センセ、帯に45万部売ったと宣伝しています。仮に一冊50円のロイヤリティなら・・2250万円ナリ。ええなあ。読む前にゼニ勘定して僻んでしまう○ビ80歳超dameo であ…

和田竜「村上海賊の娘」を読む

上下巻合わせて1000頁、上巻は友人から頂戴し、下巻は図書館で借りて読んだ。瀬戸内海に実在した村上海賊が毛利家の要請で大阪の石山本願寺へ10万俵の米を届ける。しかし、織田信長はこれを阻止せんと泉州の海賊、眞鍋一族などを使って合戦となった。その顛…

A・ランボオ「地獄の季節」を読む

eight8eight_888 さんのブログに触発されて小林秀雄訳で読みました。フランスの詩集といえば青春時代に上田敏訳の「ヴェルレーヌ詩集」くらいしか読んだことがない。今回「地獄の季節」を読んだらこれはとんでもない辛口でアブサンを直に呑んだような・・知…

 山本藤枝「現代語で読む<太平記>」

この本に出会わなければ「太平記」なんて難儀な古典に接すること100%なかったでせう。文庫本240ページに膨大な情報を凝縮かつ分かりやすく表現している。 それにしてもややこしい話である。何十人もの天皇、公家、武家、僧侶などが出入りし、登場人物…

訪ねてみたい<石川県立図書館>

今年7月にオープンした当図書館は設計の斬新さで評判になり、図書館らしくない?賑わいぶりらしい。当初は一日5千人もの入場者があったとか。下のHPの画像を見ても本で埋まった円形劇場みたいなインテリアでうろうろ回遊するだけでも楽しそう。先日紹介…

<続> 日高義樹「アメリカが日本に<昭和憲法>を与えた真相」

~その2~ 147~149ページに興味深い対談文がある。日高・・・要するに、国会議員のほとんど全員が憲法改正に賛成、軍事力の放棄にも反対はしなかった。 ビクター・ウイリアムズ・・・その通りです。憲法の改正は国会議員の間では極めて好評で、ほと…

 日高義樹「アメリカが日本に<昭和憲法>を与えた真相」~その1~

長文になったので2回に分けてアップします。 dameo は憲法改正賛成論者でありますが、賛否いずれであっても最低数冊の書物を読まないと現憲法の発想~成立のプロセスは理解できないと思っている。一冊読んで「憲法、ぜんぶ理解できました」はあり得ない。ネ…

宝島編集部「日本の新宗教50」を読む

元統一教会が安倍首相暗殺事件に関わったことで目下は非難囂々の有様で、世間では新興宗教団体への眼が厳しくなっている。では、実際にはどれくらいの新興宗教が存在、活動しているのだろうか・・という関心に応えてくれる本であります。対象は、仏教や神道…

吉村喜彦「バー堂島」を読む

小説のなかであっても自分の知っている風景や事物が登場すると気になるものです。この本で登場するのは<天保山>です。 本書は前に紹介した<子供 本の森 中之島>図書館の後ろを流れる堂島川沿いの小さなバーに集う客とマスターの交流物語。著者は当地に本…

安藤忠雄<こども 本の森 中之島>を見学 

2020年にオープンした図書館で、建築家・安藤忠雄氏が設計し、大阪市に寄贈した子どものための文化施設。小さい図書館なので、利用は予約が中心で一日数百人の規模で受け入れています。大人だけの訪問は滞在時間が90分に限られているのが気ぜわしい。平日…

中島京子「長いお別れ」を読む

後期高齢者夫婦と三人の娘が主役の介護ドラマ。ソレ、只今、自分が当事者デアリマス、という方たくさんおられると思います。ほろ苦い、悲しい思い出があるかたもいっぱいいるはず。介護のリアルな描写から、もしや著者、中島京子センセも介護の当事者か経験…

小川洋子「カラーひよことコーヒー豆」を読む

雑誌<Domani>に連載したエッセイ集(2006~2008年) ◆本物のご褒美 小川洋子いちばんの人気作品「博士の愛した数式」は2006年に映画化された。自作の映画化ははじめての経験だったので公開初日に三宮の映画館まで観客の一人として出かけた。梅田から阪…

鈴木信行「同窓会に行けない症候群」を読む

巻頭に黒地白抜き文字でこう書いてある 今、日本には2種類の人間がいる同窓会に行ける人と行けない人だ ご大層なコピーに「それがどないしてん、たかが同窓会の話やろ」とイチャモンつけたくなります。以下、236ページに亘って同窓会に行く、行かないが…

加瀬英明「ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか」を読む

今週のお題「最近おもしろかった本」 加瀬英明「ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか」 下に紹介する「四天王寺 古本市」で買った9冊のなかの一冊。著者は外交評論家。中曽根内閣などでは首相の特別顧問として対米交渉の現場で働いた。一方、びっくりし…

 美達大和「死刑絶対肯定論」を読む

二件の事件で二人を殺害し、服役中の受刑者が書いた死刑肯定論。自信をもって「凶悪犯はビシバシ死刑にせよ」と説いています。思わず「お前が言うな」とツッコミたくなります。 本書を読んでアタマが混乱しそうになるのは、二人も殺した凶悪犯が書いた本にし…

林 真理子「本を読む女」を読む

著者の母親の生涯を小説仕立てで書く・・作家ってなんと因果な職業でありませう。ドキュメントではなく小説ですよ。ようするにたくさん売るために話を盛ったり、削ったり、誇張したりと加工する必要があります。それなのに事実を歪めることはできない。なん…